誰かと話すだけでゲッソリ。1日のエネルギーを使い果たしてしまう……。そんな、社会に出るだけで何かと疲れてしまう「内向型」タイプの人に朗報だ。
台湾出身、超内向型でありながら、超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンは、「静かで控えめ」は賢者の戦略であると語っている。同氏による『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かし、世界的ベストセラーとなった。
本連載では、本書より、静かな人がその潜在能力を最大限に発揮するためのエッセンスを抜粋・編集してお届けする。第2回のテーマは「会社でまわりに人が集まる人と、なんとなく近寄りがたくなってしまう人の1つの違い」だ。(構成:川代紗生)
「静かで控えめ」なのに職場で人気になる人の特徴
口数が少なく、社交的なタイプじゃないのに、まわりから人気があって、自然と職場になじんでいる人がいる。一方で、口べたなために、職場でまわりになじめないという人も多いだろう。
内向型が「静かで控えめ」という自分の特性を活かしながら、外向型社会で生き抜くためには、いったいどうすればいいのだろうか。
「ストレスからの回復方法」が決定的に違う
世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書』には、内向型は、よく「考えすぎ」「おとなしすぎ」「内気で、無愛想」「チームプレーが苦手」のような印象を抱かれがちだ、と書かれている。
そのような印象をもたれると仕事がやりづらくなるので、無理して社交的にふるまっている、という内向型も多いだろう。
しかし、内向型が、外向型のふりをしようとするのは、現実的ではないという。
なぜなら、「ストレスからの回復方法」が根本的に違うからだ。
そう、外向型は「人との交流によって元気を取り戻す」ことができるが、それは内向型にとっては、ストレスにしかならない。
だから、無理に外向型のコミュニケーションを真似て、職場で元気いっぱいにふるまったり、自分らしくないキャラクター設定をつくったりするのは、自分をすり減らしていくだけなのだ。
本書の著者、ジル・チャン自身も、出身地である台湾を出てアメリカで働き始めたとき、さまざまな困難に直面した。
社交的な人、明るい人が評価されやすい外向型の社会において、「おとなしすぎる」「積極性がない」と思われたら不利になるのではないかと、外向型人間のようになろうと無理していたこともあったという。
しかし、あるとき、「外向型になろう」とすることは得策ではない、と悟ったそうだ。
それどころか、内向型には内向型の能力が備わっている。それを発揮するには、内向型ならではのやり方があるのだ。(P.68)
積極的に他者と関わろうとするのは悪いことではないが、内向型にとってそれは大きなストレスになる場合がある。
職場になじむためのコミュニケーションに多くのエネルギーを使ってしまい、大事な仕事に集中できなくなってしまったら、本末転倒だ。
「とても小さなこと」を相談する
では、内向型の特性を活かしつつ、まわりにうまくなじむには、どうすればいいのだろうか。
おすすめしたいのは、「まわりに声をかけやすい環境」「まわりからも声をかけられやすい環境」をつくることだ。
仕事では、日々さまざまな「気になること、わからないこと」が出てくる。
内向型の人なら、「誰に訊けばいいのかな?」「忙しくて迷惑そう」「あとで時間をとってまとめて訊いた方が……」など、いろいろと考えすぎてしまうかもしれない。
しかし、黙ってわからないことをわからないままにしていては、仕事に差し障りがでるかもしれない。あまりにもコミュニケーションを取らないと、まわりからもなんとなく付き合いにくい人と疎まれてしまう。
そこで内向型にお勧めしたいのは、まずは「小さなことを質問する」ということだ。
・このコピー機、補充のトナーがどこにあるか知ってる?
・セロハンテープがなくなったら、どこに取りにいけばいい?
・社内メールを送るとき、CCにはどこまで入れるとか、社内の暗黙のルールってある?
こうした些細なことであれば、相手に負担はかけないので、気軽に話しかけやすい。
最初は勇気がいるかもしれないが、相談されたほうは意外とうれしいものだ。頼られることで、むしろ相手に好感を抱くことにもつながる。
ちょっとしたやりとりを積み重ねていけば、互いに話しやすい関係になっていく。
また、自身も筋金入りの内向型だというジルは、新しい環境に移ったときなどは、「初日にちょっとしたこと」をしていると綴っている。
それは、同僚たちへの自己紹介に、「ご担当の業務やスキルのことで、あとで訊きたいことが出てきたら、ちょっと教えてもらえますか?」という言葉を付け足すことだ。
そんなことか、と思うかもしれないが、このひとことを最初に言っておくのと言わないのとでは、その後の声かけへの心理的ハードルは大きく異なるのだ。
「いいですよ! 〇〇の分野に関して、気になることがあったら私に訊いてくださいね」
「ありがとうございます! これから、よろしくお願いします」
こういうやりとりが最初にあれば、その後も自然に話しかけることができるわけだ。
『「静かな人」の戦略書』は、こうした、内向型が外向型向けの社会で生き抜くためのさまざまな戦略を教えてくれる。
「静かな人」のままでも、工夫次第で、他者の信頼を獲得し、ステップアップしていくことは可能なのだ。
いつも「おとなしいね」と言われがちで、生きづらさを感じている人に、ぜひ手に取ってもらいたい一冊だ。