プリンターで出力できる公的証明書類、偽造の心配もなし

 オンラインや外部での発行機を利用して公的証明の書類が取得できることについて、不安や疑問を感じる人がいるかもしれないが、プリンターで出力された証明書には不正を防ぐデジタルウオーターマーク(電子用透かし)が入る他、発行番号も印字される。また、外部の発行機では個人番号の他に登録されている指紋によって本人確認の二重チェックがされる仕組みとなっている。

 日本では指紋の採取と登録というと、「人権侵害」「犯罪に関連がある」といったネガティブなイメージがあるため抵抗を感じる人が少なくないが、韓国では冒頭で述べた通り、17歳以上の国民と韓国在住の外国人すべて、両手のすべての指の指紋登録が必須となっている。韓国で住民登録証による個人番号の振り当てが本格導入されたのは1962年からで既に60年以上の歴史がある。その背景には、北朝鮮からのスパイなどの不法入国を防ぐという目的があった。また、外国人の指紋採取と登録については2011年から定められた。

 指紋登録は個人番号に次いで、本人識別の重要なものであり、この効力が注目されたのが、昨年10月に起こったソウル・梨泰院(イテウォン)での雑踏事故であった。死傷者150人以上を出す大惨事は国民に深い悲しみと影を落とした。

 犠牲者の中には日本人含め外国人も含まれていたし、死傷者は複数の病院や施設に搬送された。それでも事故発生の翌日までには被害者の身元がほぼ全員確認された決め手は、登録されていた指紋であったといわれている。

 短期の韓国旅行者であっても、韓国入国の際には入国審査でスキャナーに指紋をかざして登録が行われ、梨泰院の事故のように、何らかのトラブルに巻き込まれた際には指紋が身元確認に使われる。「身元確認がスムーズに行われるのは指紋を登録してあるから」と、韓国において指紋登録は身分証明手段としてポジティブに捉えられているのだ。