オンライン化に対し、日本人と韓国人は対照的

 このように韓国では行政やその他のさまざまな仕組みがオンライン化され、住民登録証や番号があれば便利に利用できる半面、在住外国人には不便な面もあるのは否めない。筆者は、国籍は日本のままで韓国在住の資格となる永住権を取得している。韓国の永住権は、就労条件やビザなしで出入国できるなど韓国人と同等の権利があるものの、銀行など金融関係の新規の口座開設やオンラインバンキングの利用、前述の公的証明書のオンラインでの申請取得には制限があり、銀行や自治体の役所まで出向かなくてはならないといったこともある。しかし、韓国でも外国人労働者や韓国人と結婚して韓国に住む「結婚移民者」が増加していることから、こうした点も今後、改善されていくものと思われる。

 韓国でも個人情報流出問題は時々起こっている。極端に言えば、他人の番号を記憶すればなりすましや不正なども簡単にできてしまえるのではないかとも思える。それでも、韓国ではこの制度に対する不満や反対の声が上がることはない。筆者自身も韓国で20年以上暮らしてきて、個人情報の流出や不正利用といった被害には遭ったことはなく、むしろこの番号なくして韓国では生活できないということを実感する。

 韓国は何事に対しても常に変化やスピードを求め、国民もそれを柔軟に受け入れる。一方、日本は新しいものへの移行や導入に非常に慎重で、変化を好まないという印象がある。韓国の場合、これに加えてオンライン社会が既に完成された状態になっていることも大きな要因であるとは思う。

 日本に一時帰国すると最近では、ネットバンキングやキャッシュレス決済など、生活の中のデジタル化、オンライン化が進んでいることを感じる。しかし、さまざまな仕組みがバラバラに並立していて統一されておらず、「オンライン化したから便利」と思いづらい印象がある。さらに、高齢者を中心にオンラインに対する抵抗や不信感がまだまだ根強いというのも感じられる。

 どんなものでも、便利さの裏には、何らかの問題やデメリットがあることは否めない。韓国も長い時間をかけて、この住民登録証とオンライン社会の整備を進めてきた。日本もマイナンバーカードが定着するまでには時間を要するだろう。政府には導入の本格化ばかりを強調するのではなく、国民の不安や疑問にきちんと答え、対応できるような姿勢を見せてほしいものである。