長期運休した路線は
コロナの影響も深刻

 2012年以降、半年以上運休した路線を挙げると、2012年7月には豊肥本線の橋梁が流失し、豊後武田~宮地間の復旧に約1年を要した。2017年7月には日田彦山線添田~夜明間が橋梁の損傷や路盤・軌道の流失など63カ所で被害を受けた。また久大本線は花月川橋梁が流失し、復旧まで約1年を要した。

 2020年7月には肥薩線の八代~吉松間で球磨川第1、第2橋梁と、瀬戸石駅、球泉洞駅のホームが流失。多数の箇所で築堤崩壊や路盤流失が発生するなど甚大な被害を受け、現在に至るまで運休している。

 3年前に長期運休に追い込まれた久大本線も、今度は第二野上川橋梁が流失。日田彦山線の廃止区間の橋梁を流用することで工期を短縮し、9カ月後の翌年3月にようやく運転再開にこぎ着けた。この他、数日から1カ月程度運転を見合わせた事例は枚挙にいとまがない。

2012年以降、豪雨被害を受けた山間部を走る路線
2012年以降、豪雨被害を受けた山間部を走る路線 拡大画像表示

 そしてこうした路線は、平地の都市部をつなぐ路線と比べて利用が少ない傾向にある。被災前の2016年度とコロナ後の2021年度(カッコ内)の輸送密度(1日1キロ当たりの利用者数)を見ると下記の通りだ。

久大本線
 久留米~日田 3867人/日(2066人/日)
 日田~由布院 2027人/日(運休)
 由布院~大分 2387人/日(1590人/日)

日田彦山線
 城野~田川後藤寺 2595人/日(1827人/日)
 田川後藤寺~夜明 512人/日(運休)

豊肥本線
 熊本~肥後大津 1万655人/日(9939人/日)
 肥後大津~宮地 熊本地震の影響で運休(644人/日)
 宮地~豊後竹田 154人/日(129人/日)
 豊後竹田~三重町 954人/日(786人/日)
 三重町~大分 4018人/日(2989人/日)

肥薩線
 八代~人吉 478人/日(運休)
 人吉~吉松 108人/日(運休)
 吉松~隼人 758人/日(518人/日)

吉都線
 吉松~都城 466人/日(397人/日)

 各路線ともコロナ以降、利用者は2~3割減少しており、国土交通省の「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」が「利用者の著しい減少などを背景に利便性および持続可能性が損なわれている」目安とする輸送密度1000人未満の区間も少なくない。