退職時、会社は有給休暇を拒むことはできない

【相談】 退職の意向を伝えたら、退職日までの有休消化は認めないと言われました。

【アドバイス】 労働者による有休消化の申し出を、会社が拒むことはできません。

 退職時の年次有給休暇の取得について、基本的に会社が拒むことはできません。ただし、退職日が確定していて引き継ぎが間に合わないなど、仕事に支障が出るときは、それを理由として有休消化を拒むことがあるようです。したがって、退職前に有休消化をするには、残りの期間を考慮して、早めに会社に退職意向を伝えることが大切です。相当程度前に申告しているにもかかわらず拒まれるときは、労働基準法違反になります。外部の相談機関を活用しながら権利を認めてもらいましょう。

 なお、消化しきれない有休の買取を行う会社もあります。有休は労働者の心身の休養を目的とした制度であり、原則として買取は認められていません。しかし、例外として「有休が消滅時効にかかっているとき」と「退職時」には許容されます。この場合でも、買取自体は義務ではないので、労働者側から無理な請求はできません。退職時に未消化の有休買取をすると就業規則に記載があれば申し出てみるといいでしょう。

書影『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)
村井真子 著

 また、買取価格に法的根拠はなく、会社が自由に設定できます。よくあるパターンは、月の給与を所定労働日数で割った金額を支給する、または一律で買取単価を定めるというものです。

 それ以外では、有休消化中に新しい会社で働いてもいいのかという相談もよく寄せられます。結論から言えば、現在在籍中の会社と新しい会社の双方の了解が得られれば可能です。ただし、雇用保険は二重加入ができないので、その日程をどうするのかといった問題が生じます。また、健康保険と厚生年金保険は、2つの会社での重複加入は不可能ではないものの、保険証を一度返して切り替えることになります。短期間であれば、どちらか一方で加入するのが現実的な選択となるでしょう。その場合、加入日付については各会社の考え方によって異なるので、事前によく相談しておくことが必要です。