固定残業手当の時間を超えたら、割増賃金の請求を

【相談】 固定残業手当はあるけど、どれだけ残業しても追加の残業代は出ない?

【アドバイス】 残業時間として設定された時間を超えた分は残業手当の対象です。

 毎月の法定の労働時間に加え、あらかじめ見込まれた一定の残業時間を「固定残業時間」といいます。これに対応して実際の残業時間のうち、一定時間分の残業時間に対する割増賃金を固定給としてあらかじめ支払う制度を「固定残業代(みなし残業代、定額残業代)制」といいます。見込まれた残業時間に対応する割増賃金を毎月固定的に支払うため、基本給とは別に項目立てる必要があります。固定残業制度は、見込まれた労働時間以内に仕事を終わらせることができれば、実際の労働時間で計算するよりも多く給与をもらうことができます。つまり、労働生産性の高い人には有利な制度といえます。会社側も、一定時間内の残業であれば給与計算が簡略化できるというメリットがあります。

 固定残業に含まれる時間は会社によって異なりますが、当然、「見込まれた残業時間」を超えることもあり得ます。その場合、「実残業時間」から「見込まれた残業時間」を差し引いた分には割増賃金が発生します。固定残業手当を払ったからといって、何時間残業しても割増賃金を支払う必要がないわけではありません。もし「実残業時間」と「見込まれた残業時間」の間に差がある場合は、正当な権利として割増賃金を請求しましょう。なお、賃金債権の時効は2年です。

 固定残業制度を導入している会社に就職・転職するときは、求人票に固定残業手当の表記があるかを確認します。また、次の4つは重要です。

(1)本来の基本給そのものの額はいくらか。
(2)何時間分を固定残業として見込んでいるか。
(3)「見込まれた時間」に対応した時間分の割増賃金として計算されているか。
(4)固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払うとしているか。