何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、“あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介して、かゆいところに手が届くと話題の書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!

定年退職後、とりあえず共働き妻の扶養に入るとお得なワケPhoto: Adobe Stock

“男のコケン”を忘れれば特典だらけ

 定年退職後、個人事業主として独立しようと思っている方も多いでしょう。でもすぐにバンバン儲かるという人は一握りです。また、売上はまずまずだけど、経費も多くかかって、利益(売上から経費を引いた残り)があまりない、ということもあるでしょう。

 そんな時は、もし働いている家族がいれば、その家族の扶養に入れないか検討してみてください。扶養に入れれば、家族全体での税金や社会保険料を大きく節約できます。

「扶養」には「税金上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つの意味がある

 扶養には、「税金上の扶養」と「社会保険上の扶養」があります(詳しくは本書のp150を)。税金上の扶養というのは、「扶養している人」が扶養控除を受けられるという意味です。税金上の扶養に入ることができるのは、年間の所得(儲け)が48万円以下の場合です。個人事業だけで考えると、売上から経費(みなし経費である青色申告特別控除も含む)を引いた残りが、48万円以下であれば扶養に入れます。ちなみに、給与でいうと、103万円以下がラインです。扶養に入ると、扶養している人の所得から最低でも「38万円の所得控除」を受けられます(扶養される人の年齢によって変わります)。たとえば、年間売上300万円で経費が200万円かかった場合、青色申告特別控除(みなし経費)も引いて、所得は300万円−200万円−65万円=35万円(→48万円以下)となりますから、家族の扶養に入れることになり、その家族が38万円の控除を受けられます。仮に家族(妻)の年収が400万円くらいだった場合、6万円程度の節税になります。ちなみに、事業をしながら年金ももらっている場合は、年金も所得の計算に入れます。年金にもみなし経費である「公的年金等控除」(65歳未満は年間60万円、65歳以上は年間110万円)があるので、それを引いた部分を年金所得としてカウントします。

年間所得48万円を超えていても配偶者の扶養には入れる

 配偶者(妻・夫)以外の家族(子どもなど)の扶養に入るには、年間所得が48万円以下でないといけませんが、配偶者の扶養に入る場合は、年間所得が48万円を超えても133万円以下(給与でいうと201万6000円未満)なら、扶養している人が「配偶者特別控除」を受けられます。控除額は、扶養している人の収入により変わります。

 一方、「社会保険の扶養」というのは、健康保険や厚生年金保険などに、扶養家族として入れるということです。社会保険の場合は、年間収入180万円未満(60歳未満は130万円未満)であれば扶養に入れるケースが多いようですが、組合により条件が違う場合もあるので、詳しくは家族が加入している健保などに問い合わせてください

途中で扶養に入れなくなったら?

 税金の場合、年初は扶養に入れると思っていたけれども、年末に所得が確定して、扶養の上限を超えてしまった場合、年末調整や確定申告で最終調整をします。

 一方、社会保険は、これからの「見込み収入額」で扶養に入れるかどうかを確認します。年の途中で退職し、その年の1月1日からの収入が、すでに180万円の壁を越えていても、退職後の見込み月収が(年収180万円を月当たりに換算した)15万円を超えないだろうと判断すれば、入ることができます(60歳未満の人は、年収130万円がラインなので、月当たり10万8334円です)。年の途中で、扶養の基準を超えることが明らかになった場合は、その時点で扶養から外れることになります。さかのぼって、保険料を払わされることはありませんので、いくら稼げるかわからないうちは、扶養に入っておくと数十万円単位でトクすることも可能です。

失業手当受給中も扶養に入れる!

 実は、高額な失業手当をもらっていても税金上の扶養には入れます。失業手当は非課税なので、扶養を判定する所得としてカウントされないのです。ですから、それ以外の所得が48万円以下(配偶者の扶養であれば133万円以下)なら、扶養に入れます。一方、社会保険の扶養は、失業手当については日額で判定します。日額が5000円(60歳未満は3612円)以上の場合は、社会保険の扶養には入れません。ただし失業手当の給付終了後の見込み収入が扶養のラインを下回っていれば、その時点から社会保険の扶養に入ることができます。