発災後に提供される医療は
健康保険法ではなく災害救助法で提供される

 災害救助法の主な目的は、発災直後の応急的な救助だが、2011年に起きた東日本大震災のように、被害が甚大で、避難生活が続く場合は、その継続的な支援のための費用も対象になる。救助内容は、次の10種類となっている。

1. 避難所および応急仮設住宅の供与
2. 炊き出しその他による食品の給与および飲料水の供給
3. 被服、寝具その他生活必需品の給与または貸与
4. 医療および助産
5. 被災者の救出
6. 被災した住宅の応急修理
7. 正業に必要な資金、器具または資料の給与または貸与
8. 学用品の給与
9. 埋葬
10. 前各号に規定するもののほか、政令で定めるもの

 物資が乏しくなる災害時に、必要な救助を確実に被災者に届けるために、これらの救助は原則的に現物給付で行われている。医療・助産の現物給付は、次の5つだ。

(ア)診療
(イ)薬剤・治療材料の支給
(ウ)処置、手術、その他の治療・施術
(エ)病院や診療所への収容
(オ)看護

 災害が発生すると、DMAT(Disaster Medical Assistance Team)など、災害に備えてあらかじめ編成された救護班が、被災地に派遣される。そして、被災地で応急的な医療活動が行われることになっている。

 平常時に医療を受ける場合、患者は病院や診療所の窓口で被保険者証(健康保険証)を提示し、かかった医療費の一部を負担する。だが、発災直後に救護班から受ける医療は、健康保険法ではなく、災害救助法の下で行われている。

 ここでかかった医療費は、国と地方自治体が負担することになっており、被災者は無料で医療を受けられる。もちろん、保険証の提示や一部負担金も求められない。