正式配備の遅れで
高まる米国の不満

 これを受け、同年7月16日、ロバート・エイブラムス米韓連合司令官(当時)は国防部に書簡を送り「環境影響評価の遅延は兵士らの生活条件や基地の能力に影響する」とした上で、環境影響評価が早期かつ迅速に行われるよう支援を要請した。

 国防部が2020年7月に作成した「星州(ソンジュ)基地環境影響評価推進計画報告書」には、評価遅延に対する米国の不満や不安などが記されている。

 環境影響評価の手続き開始と終了時期について、2020年6月の韓米課長級会議で「時期は特定できない」と説明した。米国は環境影響評価前であっても、韓国電力によるTHAAD基地への商業用電力供給を要請したが、韓国政府はこれを拒否した。米軍はレーダーを運用する電気まで発電機を回して充てざるを得ない状況が続いた。その後米国は「レーダー施設だけでも電力供給に必要な工事をさせてほしい」と要請したことも判明している。

 7月20日、「国民の力」の申源シク(シン・ウォンシク)議員室が入手した2019年12月から2021年6月までの国防部作成の報告書5件には、米国がTHAAD基地に対する早急な環境影響評価の完了と接近権の確保を絶えず要請していた内容が記されている。

 接近権については、デモ隊が基地を封鎖したため、米軍は食料や必須資材まで航空で輸送しなければならなかった。

 こうした状況が長期化するにつれ、米国の反応も次第に厳しくなり、当初は「要請」とされていたのが「要求」に変わった。

 さらに2021年5月4日に作成された国防部の報告書には「(米国が)まだ常時地上接近権が保障されていないのは同盟国として理解し難い」とし「韓国の積極的な努力を強く求めた」という内容まで含まれている。国防部はこれを米国の「不満」と表現した。