アメリカのリベラル・ヘゲモニーの
今後を占う米大統領選と台湾総統選
ジョン・F・ケネディ元大統領のおいにあたる弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏が米大統領選に出馬を表明し、世界中にある米軍基地を引き揚げようと提案している。トランプのアメリカ・ファーストとは異なる、ある種のモンロー主義を主張している。
アメリカの軍隊をコンパクトにして、アメリカの本土を守るための自衛力に収めたい。膨大なカネを垂れ流し続けながら、巨大な軍産複合体を維持することをもうやめよう、その分、教育や福祉を充実させればいい、こう提案している。
実際アフガニスタン戦争だけで1兆ドル(およそ140兆円)かけたといわれる。20年で1兆ドル使い、最後はあのお粗末な撤退です。あのカネはどこへ行ったのか。軍産複合体や、アメリカの戦争請け負いシンジケート、政権幹部たちの懐に全部消えていった。
ウクライナ戦争にしてもそうです。まだ、1兆ドルはかけていないと思いますが、すでに膨大な額を投入している。ミアシャイマーが言う通り、もうこんなことはできないし、ばかげている。
ジェフリー・サックスも言っています。こんなに格差が開いて、毎年数千万人もの人が満足な医療保険にも入れない。この状況を放置して、なぜあんなことを続けているのか。私は、リベラル・ヘゲモニーはすぐには衰退しないにしても、相対的には後退すると思います。
アメリカのリベラル・ヘゲモニーが後退しているからこそ、アメリカは日本、韓国、オーストラリア、そしてNATOやG7の協力が必要なのです。仲間に引き入れなければ、リベラル・ヘゲモニーが維持できなくなっている。
今後の状況を占うのは、来年のアメリカの大統領選挙、そして、台湾の総統選挙です。この選挙で、中間路線をアピールする第三勢力の台湾民衆党(民衆党)の柯文哲・前台北市長が政権に就く可能性がある。彼は、与党・民主進歩党(民進党)、最大野党・中国国民党(国民党)とも違い、適度な距離で中国とうまく付き合っていきたいと考えている。
そうすると、今とはガラリと変わった大陸政策になる。これは中国が時間をかけて達成しようとしていることだと言う人もいます。いずれにしてもこれは台湾の人が選ぶことです。日中国交正常化以降、日本は、台湾は中国の一部だと認めている。そうすると、この問題は基本的には、中国と台湾という当事者たちに任せるしかしない。
しかし、その上で決して武力行使に至らないようにと外から言うことはできる。台湾に対しても強引な独立が危険を招く場合は、拙速なことはしないようにと声をかけていく必要がある。台湾の中でも国民の声は半分に分かれており、およそ8割の人は現状維持を望んでいる。
およそ100万人が中国に移住しているし、中国と経済交流しながら、台湾は独自のポジションを維持して、豊かさを維持したいと考える人もたくさんいる。なぜ、ことさらに「台湾有事」を唱える人たちがいるのか、私は少し不思議に感じています。