とりわけ労働力要因が深刻だ。93年から2022年にかけて、日本の総労働時間は11.7%減少した。将来を展望すると、人口の本格的な減少や高齢化の進展を背景として、総労働時間はいっそう減少する見込みだ。人口動態を反映するだけでも、総労働時間は22年から30年にかけて4.2%、同50年にかけては21.2%(274億時間)減少すると試算される。
加えて、M字カーブ(女性の労働力率が結婚・出産を機に下落し、育児が落ち着いた後に上昇する傾向)はすでに緩和した部分も大きく、過去と同様に女性の就労者数増加に期待することは極めて困難だ。さらに、正社員は残業規制を含む働き方改革の影響があり、パート労働者は「130万円の壁」が存在するため、1人当たり労働時間も減少の一途をたどっている。
これにあらがう手段は、(1)「130万円の壁」の撤廃(総労働時間の押し上げ効果は+3.0%)、(2)非正規労働者の正規化(同+3.0%)、(3)就業可能非労働力人口の活用(同+1.1~1.8%)などが考えられる。ここで挙げた対策は、30年に向けて予想される労働力不足を補う上では十分な効果を発揮し得るだろう。とはいえ、これらの政策は50年に向けて予想される労働力不足を補う力を有していない。長期的には少子化対策に加えて、労働生産性向上の支援策が並行して求められる。
(みずほ証券 エクイティ調査部 チーフエコノミスト 小林俊介)