大鳴門橋の下部にある遊歩道「渦の道」は、「鳴門の渦潮」を観察できる人気スポット。実は、渦の道がある空間は、もともと四国新幹線が走行するスペースとして整備された。ほぼ完成していながら、なぜ渦の道は「新幹線の道」になれなかったのか。その歴史をたどってみよう。(乗り物ライター 宮武和多哉)
「鳴門の渦潮」を眺めるビュースポット
もともと「四国新幹線の夢の跡」
兵庫県の淡路島は北側が本州と「明石海峡大橋」で、南側は四国と「大鳴門橋」でつながり、南北に長い島そのものが四国への連絡ルートの役割を果たしている。
また、淡路島は年間700万人が訪れる一大観光地でもあり、自然豊かな淡路島南部・四国を回遊するルートの人気は高い。中でも、上下2層構造になっている大鳴門橋の下部(上部は高速道路)にある遊歩道「渦の道」は、約50m下の海面で見られる「鳴門の渦潮」(潮流によって起こる自然現象。海面が渦を巻くように変化する)を観察できる人気スポットだ。特に団体ツアー客や修学旅行・遠足などは、ほぼ必ずと言っていいほど渦の道に立ち寄る。
そしてこの渦の道は、違う目線で楽しむこともできる。実は、渦の道がある空間は、もともと四国新幹線が走行するスペースとして整備された。上部の高速道路(本四淡路道)は1985年に開業したものの、新幹線は40年近くたった今でも未開業。周囲には新幹線のスペースとおぼしきトンネルなどが点々と残っている。
近年、観光のジャンルとして「インフラツーリズム」(生活インフラの裏側を見る観光様式)の人気が高まっている。この渦の道は、莫大な投資が実らずインフラの役割を果たせなかった「“惜しインフラ”ツーリズム」という視点で眺めることもできるのだ。
ここに新幹線を通せなかった背景には、オイルショックと、本州・四国の架橋ルートにおけるライバル「瀬戸大橋」の存在があった。ほぼ完成していながら、なぜ渦の道は「新幹線の道」になれなかったのか。その歴史をたどってみよう。