「新幹線が通るはずだったスペース」
サイクリングロードとして正式活用へ

大鳴門橋の直下。橋脚のトンネルを新幹線が通過する予定だった大鳴門橋の直下。橋脚のトンネルを新幹線が通過する予定だった Photo by W.M.

 こうして四国新幹線の“夢の跡”となっている大鳴門橋の下のスペースだが、23年現在、新たな夢に向かって走り出している。実は、淡路島と四国を結ぶサイクリングロードとして生まれ変わろうとしているのだ。

 本州と四国を結ぶルートのうち、瀬戸内しまなみ海道は、国内外から年間700万人を集客するサイクリングロードとして知名度を誇っている。また、淡路島を一周する「アワイチ」ルートの人気も高い。そこで、大鳴門橋の鉄道スペースを活用したサイクリングロードを整備する案が浮上。実現すれば、NHK紅白歌合戦で米津玄師さんの中継が行われたことでも知られる「大塚国際美術館」(徳島県鳴門市)などと連携することもでき、サイクリスト周遊ルートがいっそう盛り上がるだろう。

 兵庫県側は、早ければ23年度中にも着工を見込み、27年度にはサイクリングロードとして供用を開始する目算を立てている。なお、現在の渦の道も維持され、自転車は“押し歩き”で通行する見込みだ。

 サイクリングロードとしての整備が実現すれば、「(新幹線が開通するまでの)暫定利用」とされていたスペースが、半世紀の時を経て、観光ルートとして役目を担うことになる。となると、“惜しインフラ”の汚名返上だ。「道路一つにこんなストーリーがあるのか」などと思いをはせながら、夏休みに眺めに行ってみてはいかがだろう。