家族の絆があるべき姿?
指定が細かすぎてつらい「作品例」

 まず、今回の炎上の詳細を確認したい。たとえば作家の鴻上尚史氏は、問題の投稿を引用してこんな風にツイートしている。

 こども家庭庁の投稿にリンクされているコンクール概要を見に行くと、鴻上氏の皮肉の意味が理解できる人も多いだろう。

 募集作品のテーマは三つある。

○「こどもまんなか部門(こどもが主役の写真等)」
○「あったかファミリー部門(子育て家族の絆等)」
○「いきいき地域部門(子育てを応援する地域の絆等)」

 これだけでも、「絆」の強調やテーマ設定に疑問を抱く人はいるだろうが、それぞれにつけられた【作品例】がまた細かい。

 「こどもまんなか部門」の【作品例】は、以下のように書かれている。

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【作品例】好きなことに夢中になっている瞬間、一生懸命に何かに取り組む姿等、こどもが自分らしくいきいきと輝いている様子、家族・地域に限らず園・学校・学童・習い事のお友達や先生と一緒に、こどもが安心して過ごしている様子、周囲の人がこどもをあやしている瞬間等、こどもが大切にされていると感じられる様子 等
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 これは少し、対象作品のイメージを限定しすぎではないだろうか。これではまるで、プロパガンダの募集のように見える。

 鴻上氏やその他のユーザーたちが指摘しているように、「家族の絆」を知らずに育った人もいるし、現在進行形で家族との関係に悩む人もいる。旧統一協会の問題が指摘されて以降「宗教2世」が置かれる深刻な状況については、報道でも再三取り上げられている。

 幸せな家族に恵まれればそれに越したことはないが、問題を抱える家庭も数多くあるのが現実だ。家族に頼れない児童や10代、20代の若者にどう手を差し伸べるかについて行政がまず考えてほしいものだが、このような写真コンテストのテーマからはあるべき家庭像以外の排除を感じてしまう。

 また、どのような写真を送っても、同庁が提示する限定した読み解き方の枠に収められてしまうのであればつまらないと感じる表現者もいるだろう。もちろんコンテストに賛同する人だけが応募すればよいのだが、行政の試みとしては対象者を限定し過ぎていないか。