若手管理職たちと議論し合って新たな経営理念を作成

 会社がこういった状況にあったのは、父のワンマン経営だけが原因ではなく、段ボール製造という事業内容にも関係があります。段ボール製造にはあまり高い技術が求められず、その技術も成熟しきっているので改良の余地がほとんどありません。

 また、段ボールは輸送用の梱包資材なので、それを買い求める企業にとっても、気になるのは段ボールの質ではなく、納期と価格でしかありません。そういったわけで、段ボールを作る側も、仕事に意義や誇りを見いだせないのは、ある意味当然の結果ともいえるのです。

 このままでは、会社の先行きはない――と危機感を持った私でしたが、会社の経営については全くの素人。父から社長としての心得や帝王学を授けられたこともありません。そこで、一から会社を作り直すべく、まずは自分自身で会社経営を徹底的に学んでいきました。

 経営に関する何百冊という本を読み、経営セミナーが開かれると聞けばどこにでも足を運びました。そして、寸暇を惜しんで経営のことを学び続けた結果、会社経営の核となり、社員を一つにまとめる確固とした理念をつくる必要があると実感し、50人ほどの若手管理職たちと議論し合って新たな経営理念や会社のミッション、行動指針などを作り上げました。

 それらの内容は、それまでの“自社本位”から“顧客本位”の姿勢へと180度方向転換し、“顧客の笑顔を創るためにこの会社はある”というものでした。