汗のかきすぎも問題に
“多汗症”に悩む人々

 皮膚科医師として多くの患者に接している下方氏は「汗の悩みはニオイだけではない」と話す。

「じつは、日本人の10人に1人が“汗の量の多さ”にストレスを感じています。頭や顔、ワキの下、手のひら、足の裏のいずれかに大量の汗をかく『局所多汗症』は、季節を問わず汗が出る病気です。人前でのプレゼンや、試験中などで緊張を感じると汗が出てしまうので、生活に支障をきたす人も少なくありません」

 そのほか、シャツに汗染みがついてしまったり、手汗でスマホやパソコンが使いにくかったりと、さまざまなシーンで汗の影響を受けているという。また、多汗に加えてニオイにも問題を抱えているケースもある。

「たとえば、ワキの下にあるアポクリン汗腺が発達している人は、ワキのニオイが強くなる傾向があります。アポクリン汗腺から出る汗には、タンパク質や糖質、脂肪酸、アンモニアが含まれており、皮膚にいる細菌がそれらを分解すると強いニオイを発生させるのです。いわゆる『ワキガ』の症状で、ベタっとした汗が出るのが特徴で、多汗を併発している人もいます。ニオイが強すぎる場合は、医療機関で治療を行う場合もありますね」

 こうした汗の悩みは他人に相談しにくく、ひとりで抱え込む人も少なくない。下方氏は「汗の量やニオイで困っている場合は、一度皮膚科を受診してほしい」とアドバイスを送る。

「皮膚科では、保険診療で汗の量を抑える外用薬を処方しています。ワキの多汗症に適応がある『ラピフォートワイプ』と『エクロックゲル』は、お風呂上がりにワキの下に塗り、翌日日中のワキ汗の量を抑えてくれる薬です。活動中は制汗剤をワキに直塗りしても問題ないので、ニオイのケアも並行して行えます。また、今年6月には手汗を抑える『アポハイドローション』という塗り薬も新たに登場しました。この3年ほどで多汗症の保険適応外用薬が続々と出ているので、多汗が気になっている人は皮膚科の受診をおすすめします」

 ひとりで苦悩しているならば、医師に相談するのが得策かもしれない。こうしたセルフケアや皮膚科での治療で悩みが解消されると、夏を楽しむ余裕が生まれる、と下方氏。

「さまざまな場所で、安心して過ごせるのは大きなメリットですよね。同時に清潔感がアップして周囲に好印象も与えられるはず。それだけでなく、汗のケアを習慣化すると皮膚が健康になり、肌の病気の予防にもつながります。ビジネスパーソンの身だしなみとして、ぜひ取り入れてみてください」

 自分の汗に無頓着でいると、仕事や人間関係に悪影響を及ぼすリスクもある。脱マスクの夏は汗のケアを心がけるのが吉だ。

<識者プロフィール>
下方征(しもかた・ただし)
渋谷スクランブル皮膚科院長。2004年名古屋市立大学医学部卒業。東京医科大学病院皮膚科勤務を経て2021年に渋谷スクランブル皮膚科を開業。複数の皮膚科専門医による総合的な皮膚の診療を行う。汗の悩みに関する治療経験多数。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。