自動車よりも
ラクダが便利だったワケ

 その名のとおり、ラクダが冷蔵庫を背負っています。冷蔵庫には、太陽光で発電を行なう「ソーラーパネル」がついています。

 でも、ふとした疑問が浮かんできませんか。

「なぜ、ワクチンを運ぶのに、わざわざラクダを使うのでしょうか?」

 ジープなどを使ってワクチンを運ぶほうが、よほど合理的なように思えます。

 しかし、実際には、そのアイデアでは事がうまく運ばなかったのです。

 アフリカの大地は、想像よりもはるかに過酷です。舗装された道は少なく、車はたえず故障のリスクにさらされます。野生動物との衝突など思わぬ事故が発生する危険性もあります。車が故障すれば、修理できる人材も技術も道具も必要です。加えて、ガソリンなどの燃料代もかかります。

 つまり、アフリカにおいては、「ジープはワクチン保冷輸送車には適さない」ことがわかったのです。

「どうすればコストをかけず、安全・確実に、ワクチンを届けることができるのか?」

 このアイデアを生み出した関係者は、ジープにかわる輸送手段を必死で考えました。そして、考えに考え抜いた末に出てきたアイデアが「ラクダ」だったのです。

 アフリカの人たちにとって、ラクダは身近な「移動手段」。ジープに比べ、速度はゆっくりですが、故障の心配も少なく、メンテナンス費用もエサ代だけで済みます。そのラクダに冷蔵庫を背負わせて、ワクチンを運べばいいと考えたのです。