フィンランド写真はイメージです Photo:PIXTA

フィンランド人と結婚し、夫・子供2人とヘルシンキに暮らして、はや数年になる筆者。フィンランドの湖水地方でサウナやバーベキューを楽しもうと、貸しコテージにチェックインした。オーナーのもてなしは至れり尽くせりだが、顔を一度も見せずじまいだったのはなぜなのか……。本稿は、個性あふれるフィンランドの人々をユーモラスに描いた芹澤桂氏のエッセイ『フィンランドは今日も平常運転』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。

玄関マットの下に鍵は当たり前!?
フィンランド人は意外と不用心

 日本の友人家族が子連れで夏にフィンランドに遊びに来た際、フィンランドの田舎まで連れていった。

 ヘルシンキの観光はよっぽど歴史や建築物などに興味がない限り2、3日で終わってしまう。そうするとトゥルクやタンペレなどの地方都市、ヘルシンキから行けるポルヴォーやフィスカルスなどの近郊都市、それからサマーコテージ体験を盛り込まないとフィンランド何もなくない……?と物足りなさを抱えたままお客様を帰すようなことになりかねない。

 フィンランドでは富裕層でなくても「持っている人は多い」とされるサマーコテージを我が家では旅好きすぎて一か所にとどまりたくないと所有していないため、こういう機会には知り合いのコテージに遊びに行かせてもらったり、ネットで大手予約サイトには出ていない貸しコテージを予約したりする。

 このときも夫がフィンランド語のみのコテージ情報サイトから、フィンランド南東部の別荘地として人気の湖水地方にあるコテージを見つけてきた。ちょうどその近くの地方都市で観光する予定があり、田舎道からさらに砂利道に入って人知れず道を行くような場所にある、いい換えれば「知らないと誰も来ない」コテージに泊まるのにうってつけだった。

 そんなコテージへのチェックイン方法は事前には知らされておらず、「着いたら電話してね」とのことだった。オーナーが近くに住んでいるとか何かで鍵を持ってきてくれるのだろうと思っていたら、いざ電話してみると「あ、玄関マットの下に鍵あるから!」となんとも不用心な答えだった。

 実はコテージに限らずこういう不用心さはフィンランドではよくある。今はもう引っ越してしまったので書けるが、隣の一人暮らしのお年寄りも玄関マットの下に鍵を忍ばせていて、いざ何かあったときに誰でも入ってこられるようにしてあった(そして実際数回倒れたときは我が家やレスキュー隊がその鍵を活用していた)。田舎だと鍵をかける習慣さえないと聞くし、その他にも大きな植木鉢の下に鍵を隠している家庭も何軒か知っている。

 ともかく無事にコテージに入った。

 フィンランドのサマーコテージに欠かせない水辺(湖)、サウナ、暖炉、外のバーベキューグリル、丸太ロッジ風のインテリア、そのすべてを備えている完璧な環境だった。