よい問いが、よい企業理念を生む
僕が『理念経営2.0』で1番伝えたかったメッセージ、それは、企業理念とは常に「問いかけ」であるべきだということです。
一昔前までは、経営陣がつくりあげたスローガンを、従業員が「暗記する」ことに終始していたケースが少なくなかったと思います。
しかし、これからの時代の経営者が果たすべき役割は、企業理念を生み出す魅力的な問いと、それを社員どうしが語らう場を設定することです。
そうすると、企業理念というものが社員間の対話を通じて生み出され、自分ごとになり、そしてどんどん更新されていくはずです。これによって、はじめて企業理念が生きたものになります。
僕自身、ひとりの経営者として、理念を生み出すための問いかけを考え続けてきて、以下の7つの問いが結実しました。
ビジョン…私たちは将来、どんな景色をつくり出したいか?
バリュー…私たちがこだわりたいことはなにか?
ミッション・パーパス…私たちはなんのために存在しているのか?
ナラティブ…私たちの会社はどこから来て、どこに向かうのか? 私たちは、なぜここにいるのか?
ヒストリー…私たちのいまをつくった原点はどこにあったのか?
カルチャー…私たちの会社の“らしさ”とはなにか?
エコシステム…私たちの理念を育てるためには、どんな仕組みが必要か?
こういった問いに対する答えを社員1人ひとりが考えて、その考えを同僚と語り合うことがすごく重要です。
優秀な人が集まる組織とは?
自分たちで問いを立てて、それについて議論したものの蓄積が、最終的にその会社のアイデンティティーになり、哲学の土壌になります。それが育っていくと、世の中の状況や事業環境に変化が起きても、参照すべき自分たちの思想や行動指針がブレることなく、すみやかな意思決定が可能になります。
そういう組織は外からでも輝いて見えるので、優秀な人材が集まってきます。逆に、企業理念が機能していなくて、思想や行動がバラバラだと、優秀な人がどんどん出ていってしまうリスクがあるということでもあります。
ぜひ、同僚や経営者の方と一緒になって、自分たちなりの問いかけを考えて、企業理念を創造していただけると嬉しいです。
(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『理念経営2.0』刊行記念セミナーのダイジェスト記事です。「The Salon」の公式X(旧Twitter)はこちら)