実演後の感想を聞くにしても相手の問題意識が分からなければ「いかがですか?」という聞き方しかできません。そうした一般的な質問には、聞かれたほうの立場で考えれば明らかですが「いいわね」「すごいのね」という感想しか返しようがありません。それ以上の会話の発展はないのです。

 しかし、相手の問題意識に沿った効果的なデモンストレーションになっていれば、「どのくらい違うの」とか「掃除の効果はどれくらいもつの」といった具体的な質問に発展し、さらに会話を重ねていくことができます。

 一般にデモンストレーションというと、こちらからの一方的なアクションがすべてと捉えられがちですが、確かに実演するのはもっぱらこちら側であっても、そこにはコミュニケーションが成立していなければなりません。実演者と見物客がいるのではなく、顧客も自分の問題意識を前景化させ、自分の問題として受け止めながら注目しているという状況をつくることが重要です。単なる見物人にしてしまったら失敗なのです。つまりデモンストレーションも、実際に言葉がどうやりとりされているかは別にして、双方向での内容豊かな“会話”でなければならないのです

 そして3段階目がクロージングです。より詳しくいうと購入の意向確認と売買契約書の取り交わし、商品の引き渡しです。手続きが中心になる段階ですが、しかし単なる形式ではありません。

 顧客がデモンストレーションを見て良いなと感じたところを言語化して、確かに購入の価値のあるモノだということを改めて明示する必要があります。

「確かに良いモノだと思うけれど、本当に大金を出すだけの価値があるのか?」ということを顧客は必ず考えています。それに対して「いい機械でしょう?」と言っても決断の後押しになりません。「これさえあれば、あなたの、あるいはあなたの家族のこういう心配はいっさい不要になる」という顧客の悩み事に即した個別的で具体的な価値を改めて提示することが必要です。

 契約書にサインしたり捺印するという段階になれば誰しも躊躇があります。それを乗り越える力は外からはつくれません。「この購入でこれまでの悩みが解決できる。ああよかった」という顧客自身が得るベネフィットこそ、不安や躊躇を押しのけて契約する力です。

 この3段階は、セールスする側の3段階であると同時に、顧客の側がものを購入するときの認識の深まりのプロセスでもあります。