写真:京都アニメーション,放火Photo:Carl Court/gettyimages

京都アニメーションのスタジオにガソリンをまいて放火し、36人を殺害、32人を負傷させたとして殺人と殺人未遂、現住建造物等放火、建造物侵入、銃刀法違反の罪で起訴された青葉真司被告(45)の初公判が9月5日、京都地裁で開かれる。犯罪史上、まれに見る数の犠牲者を出した事件は発生から約4年2カ月が経過。公判は計25回という裁判員裁判としては異例の回数が組まれたが、青葉被告が何を語るのか注目される。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

犠牲者にささげられた
36本のヒマワリ

 事件から4年となった7月18日、現場の第1スタジオ跡地(京都市伏見区)で遺族や社員ら関係者が参列して追悼式が開催された。式は非公開だったが、全国紙社会部デスクによると、会場には「追悼」と記した祭壇が設置され、犠牲者と同じ36本のヒマワリがささげられたという。

 京アニは八田英明社長が読み上げた弔辞を公開。それによると「天空から36人のみんなも見てくれています」とし、事件当日を境に日常が失われたことを「本当に筆舌に尽くしがたい」と悔やんだ。

 事件発生の午前10時半には、ユーチューブの京アニ公式チャンネルも追悼映像もオンエア。遺族の「あなたたちの技術や情熱は京アニ社員に引き継がれ、今後も素晴らしい作品を作り続けていくことでしょう」などとするメッセージを紹介した。

 筆者は事件から約4カ月後、京阪電車宇治線・六地蔵駅近くの閑静な住宅街にある現場を訪れ、手を合わせた。当時はまだ焼け焦げた建物が残っており、平日にもかかわらずファンとみられる若い方々が相次いで頭を下げて合掌し、涙を拭い嗚咽(おえつ)する姿も目にした。

 筆者も京アニ作品のファンで、特に「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズは繰り返し鑑賞した。また、自らも軽度の聴覚障害があるため「聲(こえ)の形」は身につまされた。

 事件当時は既に現場の記者としては引退した身だったが、後輩である前述のデスクから犠牲者の匿名・実名問題に関する相談などを受けていたため、現場の記者が読者らの批判に苦悩していた実態も聞いていた。

 京アニや遺族は事件現場とは別の場所に、世界中から寄せられた支援と追悼に対する感謝を表す碑を建立する意向を示している。現場に慰霊碑の設置も検討しているが、付近住民が「不特定多数の人が集まると平穏な暮らしに支障が出る」などとして、慰霊碑建立などをしないよう求める要望書を京アニ側に提出しており、宙に浮いたままになっている。