裁判長に求められる
繊細かつ慎重な訴訟指揮

 公判維持の懸念材料として、ほかにも青葉被告の健康状態が挙げられる。現行犯逮捕の後、全身の9割にやけどを負って瀕死(ひんし)の重体だった。医師らの懸命の治療で意識が戻り、話せるまでに回復したとされる。

 近況は伝わってこないが、現在は収容先の大阪拘置所でリハビリに取り組んでいるとみられる。ただリハビリは、本人の意思と意欲が回復状況を左右するというのが一般的な常識だ。

 長期間の寝たきり生活で筋肉が衰えて肉体的にキツイだろうし、何より「回復してもどうせ死刑になるなら無意味」と投げやりになっていたら、ほとんど回復していないのではないか…。前述のデスクは「まさかストレッチャーに横たわったまま法廷に姿を見せるとは思えませんが、自力では歩けず、車いすではないでしょうか」と推測していた。

 冒頭の「何を語るか」だが、話すことが可能になったとしても、裁判官や裁判員、検察官、弁護人、書記官らが聞き取れる程度の声が出せるかどうか。全身の9割にやけどを負ったということは気道熱傷(注:熱や煙を吸入することで起きる喉や気管支、肺など呼吸器系の障害)も重篤だったはずで、その後遺症も軽くないはずだ。

 実質的には「意思表示は可能」というレベルと考えるのが相当だろう。20年5月に逮捕状執行のため、病院から伏見署に移送される際には指が不自然に曲がっていたため、筆談も難しそうだ。となれば、青葉被告の小声を聞き取り、代わりに発声する代弁者を立てる措置も取られるかもしれない。

 異例ずくめの公判は京都地裁による警備なども含め、裁判長は繊細かつ慎重な訴訟指揮を求められることになりそうだ。