大手私鉄15社は2023年度第1四半期決算を発表した。全社が営業黒字、経常黒字、最終黒字を達成したが、一方で運輸事業は各社ともコロナ前を下回ったまま推移しており、関東と関西では回復傾向の違いも浮き彫りとなっている。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
昨年度からの運輸事業の復調と
レジャー事業の赤字縮小で正常化
日常の「アフターコロナ化」が急速に進む中、大手私鉄15社は2023年度第1四半期決算を発表した。全社が営業黒字、経常黒字、最終黒字を達成したが、その内容はさらに改善している。東急、小田急電鉄、京王電鉄、東武鉄道、近鉄グループホールディングス、阪急阪神ホールディングス(HD)、西日本鉄道の7社の経常利益はコロナ前の2019年度同期を上回った。
経常利益は阪急阪神HDの約368億円(前年同期比43%増)、東急の約277億円(同169%増)、東武の約236億円(同64%)の順に大きく、最小は京浜急行電鉄の約54億円(同210%増)。経常利益率で見ても東京メトロの19.8%を筆頭に、京成電鉄が19.1%、小田急が15.3%で続いた。コロナ前も概ね10~20%の水準だったので、利益は減少しても経営合理化で利益率をキープしていることが分かる。
これまでの決算記事でもたびたび指摘してきたように、コロナ前の大手私鉄は運輸事業と不動産事業の二本柱を軸に、百貨店やスーパーなどの流通事業、観光施設やホテルなどのレジャー事業を核として事業を展開してきた。
しかし、コロナ禍で鉄道利用者と観光客が大きく減少し、運輸事業とレジャー事業は巨額の赤字に転落。影響が小さかった不動産事業だけではカバーできなくなり、各社が赤字に転落した経緯がある。そうした中、2022年度から運輸事業の復調と、レジャー事業の赤字縮小が進み、ようやく経営が正常化したのが現状だ。