喧嘩している夫婦はその旅行予算が妥当なものかイメージを持っていません。だから「こんなに使っていいのか」と不安になっています。不安があれば旅行の時間を素直に楽しめません。それでは非日常の体験から生み出す感動も得にくくなり、結果として幸福度を下げています。

 帰り道で「行かなければよかった」と喧嘩をしているなら、本当に旅行に行かないほうが喧嘩も不安もなく10万円も消えることがなかったでしょう。

 仲良し夫婦のほうはおそらく、「年に一度10万円の旅行予算を設定しても、80歳くらいまで問題なくやりくりできるだろう」というイメージを持っています。冷静に考えれば10万円の旅行を65歳から15回出かけたところで150万円の予算です。月割で考えても8000円ちょっとの予算でしかないわけです。それが「見える化」されているからこそ気持ちよくお金を使えるわけです。

 将来お金の尽きる不安というのは、私たちの幸福度に大きく作用しますが、特に年金生活者にとっては切実です。

 しかし基本的な生活費が公的年金でやりくりできている家計なら、老後の破たんも心配はありません。公的年金は2カ月に一度、何十年長生きしても振り込み続けてくれるからです(年金額の多いほうが先立った場合は、その一部を遺族年金として遺されたほうに上乗せしてくれる仕組みもある)。

 自分の使うお金と、自分の未来に不安がない人は気持ちよくお金を使うことができます。これは幸せを感じるお金の使い方を考える基本です。

「ときどきの出費」「高額の出費」ほど
気持ちよく使わないと損

 お金の使い方を言うとき、「ケチ」とか「浪費癖」とかいろんな言われ方があります。でもここで着目されているのは「金額の多寡」のみであって、「満足度」「幸福度」の指標は入っていないように思います。

 ファイナンシャル・ウェルビーイングの観点では、「満足度」や「幸福度」を獲得できているかに注目してみましょう。