小西:なるほど。子どもと一緒に成長するキャラクターの「しまじろう」にも、それは表れていますね。事業は多様でも、顧客の課題解決や目標達成をサポートするベネッセのサービスには、人の「自立」や「成長」の支援という、普遍的なテーマがあるのではないでしょうか。
共創テーマとしての
「一人ひとりのモチベーション支援」
橋本:自学自習の通信教育が培ってきた要素でもありますが、顧客一人ひとりが何かを成し遂げとようとする継続的な「モチベーション支援」が、ベネッセがお客様と関わる価値であり、存在意義なのかもしれません。たとえば、受講者の添削指導をする「赤ペン先生」も、単に指導するのではなく、学びのモチベーションを高めるためのさまざまなノウハウを持っています。
(株)電通ブランドクリエーションセンターのチーフコンサルタント。2002年米国プロフェット社に出向し、デービッド・アーカーらとグローバル企業のブランド戦略構築に携わる。現在戦略コンサルティング部のチーフコンサルタントとして、数多くのクライアントのブランド・マーケティング戦略サポートを行うとともに、多数の講演、執筆などで、デジタル時代の新しいブランドおよびマーケティング戦略モデルを提唱している。著書に「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」(ダイヤモンド社)。
電通ウェブサイト内「電通人語」でもコラム連載中。
小西:確かにそう思います。もう一つ、ベネッセのブランドとビジネスを語る上で、顧客一人ひとりとの継続的な関係(エンゲージメント)を築くという、「ダイレクト」と「継続型サービス」というモデルは、欠かせない点ですね。
橋本:まさにそれが、他にできない価値と収益を生み出す上でのベネッセの強みです。会員システムなどで個人と直接関係を築き、一人ひとりに最適化したサービスの提供とフィードバックによって、価値を共創していくという双方向性が、われわれのビジネスの本質です。普通の会社では、一度出すと数年は変えない教材なども、ベネッセでは、お客様からのフィードバックによって毎年、確実に進化しています。
もう一つ言うと、「プロシューマー型ビジネス」という点も挙げられるかもしれません。赤ペン先生はもちろん、進研模試なども、早くから学校の先生に参画していただき、関係者のコミュニティを拡げ、事業を拡大してきました。出産や子育てでも、母親のリアルの声や体験を共有するウィメンズパークなどは、われわれの貴重なマーケティング・プラットフォームであることはもちろん、お客様にとっても重要な社会的プラットフォームとなっています。
小西:そして、ベネッセのサービスの入会・利用のきっかけも、会員からの口コミや紹介が非常に大きな割合を占めているとお聞きしています。
橋本:その通りです。これも創業者の言葉ですが、本当にいいものを届けて、お客様と一緒に価値を創りだすことで、「お客様にセールスマンになってもらう」ということを、マーケティングでもきわめて重視しています。教育など、信頼性がもっとも重要なサービスなので、お客様の口コミがその鍵となるからです。