注目集まった徳島市の新呼称

 2021年1月、柳川市は現行の可燃ごみの回収袋にプリントされた「燃やすごみ」を「燃やすしかないごみ」へと変更した。また、ごみ袋「大」の値段を1枚20円から40円に大幅値上げし、ペットボトル用袋とプラスチック類袋を50リットルで10円、25リットルで5円とした。分別するほど家計が助かる仕組みを用意したのである。これが効果てきめんで、可燃ごみの収集量が約10%減り、再利用可能なプラスチック類の収集量が2倍になったのであった。

 この流れがわずかな波紋を呼んだ。プラスチック製レジ袋提供禁止の条例を初めて導入したことで知られる京都府亀岡市が今年4月に「燃やすごみ」「埋め立てごみ」の名称をそれぞれ「燃やすしかないごみ」「埋め立てるしかないごみ」に変更。5月には徳島県徳島市が「燃やせるごみ」を「分別頑張ったんやけど、燃やすしかないごみ」へと変更した。これによって、リサイクル可能な紙類やプラ類を、可燃ごみでなく資源ごみの方に捨ててもらうもくろみである。

 徳島市のネーミングについてはなかなかとんがっているので注目を集めていて、賛否あるが、「取り組みとしては面白いけど、それで本当に狙い通りの効果が上がるのかねえ」といまいち乗り切れない人は一定数いそうな印象を受けた。この人たちはおおむね、徳島市の「(関心を高めるための方策まじりとはいえ)面白いことやりまーーす!」という気配が漂うネーミングによって冷めてしまっている。なので、すでにやや批判的な構えになっていて、「面白さを取りに行った割には面白くなく感じるから、これで本来の目的の方である分別意識の向上が見込まれなかったら目も当てられないよ?」というわけである。

 日本の自治体は伝統的にユーモアを発信することは罪だとすら考えているらしき節があるので、そのやぼったさを打破していく意義ある一撃を徳島市は見舞ったわけである。その試みの結果滑ることになったとしても大いに結構であろう。今でこそ、どのような場であってもそつなく適度に笑いを取って壇上を後にする自信のある筆者だが、大学の語学クラスの自己紹介でだだスベリをしたことがきっかけでやけに仲の良いクラスの中で筆者だけが孤立し、いたたまれなさ極まってやがて教室にいられなくなり単位を落として留年したこともある。人は滑るからこそ成長できるのである。

 徳島市の「分別頑張ったんやけど、燃やすしかないごみ」の評価は分かれているが、徳島市をはじめとする各自治体のユーモアスキルの成長のステップと考えれば、大きな成果である。

 そもそもこのように筆者含む外野が何を言おうと、徳島市の目的は市民の意識変革および資源ごみの回収率アップなので、滑る・滑らないにかかわらず、「どのような形であれ注目を集めた=意識変革のきっかけを多く作った」というところで大成功といえよう。

ごみ処理に取り組む自治体の動き
未開拓ほど伸びしろあり

 食品ロス問題ジャーナリストの井出留美氏がまとめている記事『「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円超のごみ処理減らす全国の自治体 少ない1位は?』(Yahoo!ニュースエキスパート/2023年4月10日)によれば、1人1日当たりごみ排出量の少ない自治体では、それぞれ特筆に値すべき試みが行われている。たとえば人口50万人以上の自治体の中で1位の八王子市、2位の京都市では、ともに食品ロスへの取り組みやごみを減らす施策に力が入れられている。3位は松山市で、こちらは剪定した枝や学校給食の残りなどをすべて資源として活用しているそうである。

 柳川市が上げた成果を見る限りでは、上手な、しかしちょっとした工夫次第で進展を見込める分野であろう。可燃ごみの「燃やすしかないごみ」への呼称変更に類する取り組みは今後全国で活発になっていっていいように感じた。言うはやすしだが、一市民としては全国の自治体にはぜひ徳島市のように、実益とエンターテインメントを兼ねた試みをどんどんやってみてほしいと願うばかりである。