「燃えるごみ」から「燃やすごみ」へ
取り扱いがあいまいになった可燃ごみ

 1980年生まれの、記憶力の悪い筆者による幼少の頃の記憶によれば、ごみはだいたい「燃えるごみ・燃えないごみ」の2種類で分別されていた。古紙・古本回収の車がまれに走っていたことがあった気がするので、紙類の資源ごみも別途回収されていたと思われる。

 それからやがて、燃えるごみの呼び方は「燃やせるごみ」や「燃やすごみ」「可燃ごみ」などと分化していった。一体なぜだろうか。

 平成の時代を振り返ってみると、その訳が推察される。90年代後半、世間のダイオキシンへの関心が高まり、ダイオキシンの発生を抑制する「ダイオキシン類対策特別措置法」が2000年に施行された。廃棄物焼却炉の温度はダイオキシンをほぼ無害化できる800度以上でコントロールされ、ダイオキシンの環境放出量を激減させることに成功した。

「超高温でダイオキシンも発生させない焼却炉」なる存在は非常に頼もしく、ならばそれまでは「燃えないごみ」として分別していたビニールやプラスチックもある程度までなら問題なくガッツリ燃やしてくれるのではないか――ということで、分別する意識は薄まって、筆者自身も「燃えるごみ」の方に突っ込むごみが増えた。

 筆者の感覚だが、「燃やすごみ」といった呼び方が出てきたのはこの頃からではないか。「燃えるごみ」という呼び方だと、有能な焼却炉のおかげでほぼすべてのごみが当てはまってしまう。だから「燃やすごみ」「燃やせるごみ」という表現を用いて、「燃やさないで回収したいごみ」を可燃ごみの側から消去法的に指定するメッセージを含意させたのである。

 とはいえ、その指し示し方は回りくどく、「燃えるごみ」と「燃やすごみ」「燃やせるごみ」の違いはわかりにくかった。

 なお、福井市のサイト内Q&Aコーナーにて「『燃えるごみ』と『燃やせるごみ』はどう違うのですか?」という質問がピックアップされている。その回答は「燃えるものでも燃やさず分別することがある」などと載せられているが、そうしたQ&Aを発信している姿から「自治体の方にその質問が多く寄せられているのだろうな」という内情が察せられるのであった。

「燃やすごみ」「燃やせるごみ」などの登場によって可燃ごみの捉え方は多様さを増し、その分あいまいとなった。そして輪郭を失いつつあった「可燃ごみ」に、再度明確な枠付けをするための一手を打ち出したのが、冒頭で触れた福岡県柳川市の「燃やすしかないごみ」だったのである。