しかし、そもそも不動産投資の本質は各種賃貸用建物の賃貸業であり、立地条件と顧客の動向、少子高齢化といった社会の環境変化、金利や景気などの経済情勢、さらには自然災害などに大きく左右されます。こうした不動産投資を取り巻くさまざまな要素・状況は今急速に変化しつつあり、また先行きが極めて不透明になっています。
20年後、30年後も安定して収益を上げ、市場価値が維持される物件をどのように選べばよいのかについて考えたときに、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の視点が重要になるのです。
不動産投資におけるE(環境)では、建物の省エネ性がまず挙げられます。省エネ性の高い建物は二酸化炭素の排出を抑えるだけでなく、居住環境、執務環境としても優れています。
不動産投資におけるS(社会)では、地域コミュニティとの関わりが重要です。例えば地域の景観への配慮や地域の伝統文化との関わりが考えられます。
不動産投資におけるG(ガバナンス)では、法令遵守は当然のこととして、顧客をはじめ関係者への説明責任が問われます。こうした取り組みを意識することで不確実性の高まるこれからの時代において、不動産投資で長期的に安定したリターンを確保できるのです。
日本でのESG不動産投資への取り組みとしては、非住宅系のオフィスビル・商業施設・倉庫・物流施設などから進んでいます。具体的には、J-REIT(日本版不動産投資信託)や機関投資家、ファンドでESGに配慮した投資の意思決定が浸透しつつあります。
例えば、2020年7月に日本経済新聞社が日経ESG-REIT指数の算出を開始し、同年9月には上場インデックスファンド日経ESGリートが東京証券取引所に上場しました。
国土交通省ではオフィスビル(自社ビル・賃貸ビル、新築・既存)を対象に、環境負荷の低減だけでなく、執務環境の改善、知的生産性の向上、優秀な人材確保などの観点から、働く人の健康性、快適性などに優れた不動産の認定制度について検討中といいます。
こうした動きを受けて、国家資格者である不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価でも現在、ESGを考慮することが検討されています。
将来的にはESG評価が高い物件が市場でも高く取引される時代になることが予想されます。