不動産でのESGへの取り組みは住宅分野でも進んでいます。

 例えば、国土交通省、経済産業省、環境省では2015年、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上でネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の実現を目指す」という「ZEHロードマップ」を策定し、補助金を導入するなどその普及に向けた取り組みに力を入れています。

 その結果、2020年にハウスメーカーが新築した注文戸建住宅のうち約56%がZEHとなっており、近年はZEHの対象をマンションやアパートに広げています。

 さらに2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」とされました。

 改正建築物省エネ法により戸建てなど300平方メートル未満の住宅についての説明義務(建築士から建築主に対する説明義務)が2021年から新たに導入されたり、2019年からは住宅トップランナー制度の対象が建売住宅のほか注文住宅や賃貸アパートに広げられたりもしています。

ZEH基準をクリアする基本的要素である
高断熱、省エネ、創エネを知ることが重要

 ZEH基準をクリアするには基本的に3つの要素が関係します。すなわち、高断熱、省エネ、創エネです。

 高断熱のためには、外壁や屋根などに高機能な断熱材を使うこと、窓枠に樹脂素材を使用すること、複層ガラス(ペアガラス)を使用することが重要です。

 省エネのためには、エネルギーの消費効率の良い給湯器(エコジョーズ、エネファーム、エコキュート)を使います。エネルギーの消費効率の良いエアコン、床暖房、換気設備、LED照明などを設置することも大切です。

 創エネのためには、屋根にソーラーパネルを搭載して、太陽光により発電します。ただし、狭小地やマンションなどでは設置が難しく、不利になりやすい点には注意が必要です。

 ZEHは2012年から経済産業省の支援事業が開始されています。当初は大手ハウスメーカーなどの戸建て住宅が対象でした。具体的には省エネと創エネ(太陽光発電)で住宅の設計一次エネルギー消費量が100%削減可能なものを「ZEH」、75%削減可能なものを「Nearly ZEH」として定めました。

 2018年5月にはZEHのさらなる普及拡大につなげるため、都市部狭小地域や多雪地域などの制約がある地域もZEHを目指すことができるよう、「ZEH Oriented」の定義が設けられました。ZEHは2020年度の年間の供給実績で約6.6万戸、累積の供給実績で約27万戸にまで達しています。