もう1件の研究は、Mora Hospital(スウェーデン)のMy Blohm氏らが、スウェーデンの胆石の手術に関するレジストリを用いて、2006年1月1日から2019年12月31日の間に胆嚢摘出術(64.9%は待機的手術、35.1%は緊急手術)を受けた患者15万509人の術後の転帰を外科医の性別により比較したもの。外科医の総数は2,553人〔女性外科医が849人(33.3%)、男性外科医が1,704人(66.7%)〕で、対象患者の25.1%(3万7,847人)の手術を女性外科医が担当していた。
解析の結果、手術合併症(出血、内臓穿孔、胆管損傷など)は、男性外科医による手術後の方が女性外科医による手術後よりも多く生じていた。男性外科医による手術後に手術合併症が生じるORは、女性外科医による手術後を1とした場合、全体で1.29(95%CI 1.19〜1.40)、待機的手術で1.39(同1.25〜1.54)、緊急手術で1.17(同1.04〜1.32)であった。
男性外科医による待機的手術では女性外科医による手術に比べて、胆管損傷の発生リスクが高かったが(OR 1.69、95%CI 1.22〜2.34)、緊急手術では、性別による有意差は認められなかった。全合併症についても、男性外科医による手術後の方が発症リスクが高かった(同1.12、1.06〜1.19)。このほか、手術に費やす時間は、女性外科医の方が男性外科医よりも長いことも示された(待機的手術では女性外科医で平均100分、男性外科医で平均89分)。
なぜ女性医師のほうが
リスクが低いのか
では、なぜこのような男女差が生じるのか。本論文の付随論評を執筆したスカーネ大学病院(スウェーデン)の外科医であるMartin Almquist氏は、その差が、リスクに立ち向かうことに対する考え方、他者と協力する外科医の能力、手術に関する決定を下す際の「患者中心主義」に起因する可能性を示唆している。
同氏は、男性外科医と女性外科医の性格特性の違いが手術後の転帰にどの程度影響を与えるかについては、今回の研究では明確にはできないものの、「手術において患者に一貫して良好な転帰をもたらすためには、正確さと慎重さが、思い切った行動力や手技の速さに勝る可能性が高い」との見方を示している。
一方、研究グループは、女性の外科医はまだ少数派であることに触れ、「この研究で得られた新たな知見が励みとなり、外科を専門として選択する若い女性医師の数が増えることを期待している」と話している。(HealthDay News 2023年8月30日)
https://consumer.healthday.com/surgery-2664601109.html
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