昨年1年間で、海外旅行をした中国人はのべ8000万人近くになった。一方、訪日外国人客は前年比34.6%増の836万8100人になった。そのうち、訪日中国人客は前年比37.1%増の143万人になり、史上最高記録を更新し、5年連続100万人規模を維持している。
昨年9月までは、実は、中国人の日本訪問が大幅に増えていた。例えば、石川県が春節前後に受け入れた中国人観光客はなんと2010年の5倍増で、来年の春節はどうしようと嬉しい悲鳴を上げたほどだった。しかし、昨年9月以降、日中関係が厳しくなり、中国人観光客が急激に減少した。しかし、それでも訪日中国人客の人数が最高記録を作ったことは本当に嬉しい。その意味の大きさを高く評価したい。
見落とせないビザという要因
だが、観光業は平和産業で、政治的地震による影響を一番受けやすい。周辺国と比べると、その影響のあとが顕著に出ている。日本が直面する課題も見えてくる。
タイは昨年の中国人観光客の受け入れ人数が270万人で、初めて200万人という大台を突破して、マレーシアを抑え、東南アジアで1位の地位を確保した。韓国も2012年10月末の時点で同国を訪れた外国人観光客が初めて1000万人を超え、中国人客が昨年同期比30%増の244万人だと発表している。これらの国は日本より国土が小さく、観光資源も少ないはずであるにもかかわらず、いずれも訪日中国人客の倍近くの実績を作っている。
なぜそこまでの実績を作れたのかを見ると、ビザという要因が見落とせないと思う。ご存じのように、中国人訪問者に対して、多くの国々が入国ビザの取得を必要条件としている。タイも韓国も例外ではない。しかし、一言で中国人訪問客と言っても、その構成内容が複雑だ。海外に居住している中国人も多い。中国国内にも地域によっては、所得や民度の差も相当出ている。それにどう細かく対応できるのかも、中国人観光客をひきつける秘訣の一つではないかと思う。