モノ自体よりもデザインやブランド性などの「付加価値」を求める消費が拡大し、情報がより価値を生む情報社会が進展する中で、男性だけが長時間働くような働き方が必ずしも生産性を高めるとも限らなくなってきています。

 組織が環境の急激な変化に適応したりイノベーションを起こしたりする上では、男性だけの同質的な集団よりも、女性も含めた多様性(ダイバーシティー)に富んだ集団の方が有利であるとの認識も浸透しつつあります。

 こうして、家庭責任を女性に任せて男性だけが長時間働くという分業体制は、理念としてそれに賛成か反対かという以前に、現実問題として現在の社会情勢にもはや適合しないものとなりつつあります。

 日本の社会と地域が持続可能な発展をしていくためには、男女双方がさまざまな業種、さまざまな職種において、効率よく働きながら、家庭の責任も分かち合うライフスタイルが要請されているのです。

家事や育児も抱えた女性労働者は
仕事最優先の男性と張り合えない

 根本的な問題は、男女双方が、いまだに「男性稼ぎ手」家族を標準とした社会の仕組みのもとで働かされ、家庭生活を送っていることです。

 これまでの日本では、一家の稼ぎ主としての役割を果たすに足る収入を得る代わりに残業や出張や転居を伴う転勤を前提として雇用主の要請に私生活を従属させる「仕事最優先」の働き方をするか、そのような働き方ができないのなら一家を養うどころか単身での生活もままならないほどの低い賃金に甘んじる非正規雇用か、というように雇用パターンが二極化する傾向にありました。

 こうした環境のもと、夫婦ともに仕事を最優先にしながら育児をするのは困難なので、多くの夫婦では、一方が仕事を最優先にするのと引き換えに家族が生活できるだけの賃金を稼ぎ、他方が育児を優先してキャリアを断念するか、そうでなくても育児に支障のない範囲で柔軟に働く代わりに低賃金に甘んじるという選択をせざるを得ません。

 そして、旧来の「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業慣行や、事実上男性の方がより多く稼げる機会構造と相まって、女性に比べて圧倒的多数の男性がこの「仕事最優先」の働き方を引き受け、逆に多くの女性が子育てのためにキャリアを犠牲にせざるを得なくなっています。女性たちは、管理職に昇進しようとすれば、家事や育児をほとんど担うことなく「稼ぎ手」として仕事最優先で働いている男性たちと競い合わねばなりません。

 女性たちに期待される「活躍」がそのようなものであるならば、いくらチャンスを与えられたとしても、子育てとの両立における負担の重さを考えて二の足を踏む女性も少なくないでしょう。