大卒新入社員を対象とした追跡調査において、女性社員の66%が入社1年目には「管理職を目指したい」と答えていたのに、入社4年目にはその割合が40%とほぼ5分の3に減少しており、管理職を目指したくない最大の理由が「仕事と家庭の両立が困難になるから」であったという結果は、このことを如実に物語っています。

 また、一家の稼ぎ主の役割を果たすために長時間働く男性の働き方が「標準」とされるような社会のあり方を変えないままでは、男性たちの家庭役割参加は限定的なものにならざるを得ません。

 男性たちが個人的な頑張りで仕事の合間に少しだけ育児に参加したくらいでは、育児のために仕事を辞めていた多くの女性たちが仕事を辞めずにキャリアアップを図るようになるとは思えません。

 子どもの誕生によってさらにお金が必要になりますが、妻が出産を機に仕事を辞めたり正規雇用から非正規雇用に変わったりすると、夫の稼ぎ手としての責任はさらに重くなります。長時間労働が当然とされる職場で、育児のために夫が仕事を減らせば、それがきっかけでリストラの標的にされるかもしれない。

 そうしたリスクを避けるためにも、子どもの誕生後は不本意ながらそれまで以上に仕事に頑張らざるを得ない男性も少なくないでしょう。

 個々のカップル単位では、夫が稼いで妻が育児に専念してもいいし、逆に妻が稼いで夫が家庭責任を果たしてもいい。しかし、女性活躍を促進し、男女のワーク・ライフ・バランスを実現しようとするのであれば、社会全体としては、男性は労働時間を減らせる方向へ、逆に女性には夫に依存しなくても経済的に自立できるだけの就労機会が保証される方向へと、男女の就業機会構造を変化させることが必要でしょう。

弱者男性が感じる「生きづらさ」は
男性優遇社会の代償

 ワーク・ライフ・バランスとジェンダー平等の実現は、「社会が持たない」とか「女性のため」といった、いわば男性にとって外発的な理由によってのみ求められるものではありません。それらは、これまでの社会で男性たちが抱えてきた「生きづらさ」の解消にもつながります。