ダイヤモンドの光と影
生産過程の社会的問題も争点に
英王室ヘンリー王子と結婚したメーガン妃や女優ペネロペ・クルスら海外セレブが身に着け、話題となった人工ダイヤモンド。ダイヤ世界最大手の英デビアスや、百貨店大手の松屋なども人工ダイヤモンドのブランドを立ち上げており、認知度は高まりつつある。その市場規模は2022年の209億ドルから、31年には525億ドルと2倍以上に成長する見通しだ。
ところで、人々を「永遠の輝き」で魅了してやまないダイヤモンドは、そもそもどのように作られるのだろうか。
天然ダイヤモンドは33億年前、地下100キロ以上の地底奥深くで、2000℃もの高温と6万気圧という高圧にさらされた炭素原子が結晶となり、火山活動によって地表近くまで運ばれたとされる。
一方、人工ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドが形成された地球内部と似た環境を超高圧プレス機で人工的に作り出し、炭素を結晶化させる「高温高圧法」と、メタンガスなどから取り出した炭素原子を高温で結晶板に付着させる「化学気相蒸着法」が用いられる。完成までの期間は、大きさによって数日から数週間。かつてはダイヤモンドカッターのような工業用やレコード針として使われていた。
宝飾品としての人工ダイヤモンドの利用が広がったのはここ30年ほどの出来事だが、生産技術や品質の向上だけでなく、天然ダイヤモンドの採掘・生産に付きまとう社会的問題が知られるようになったことも大きいだろう。
鉱山を切り崩し、大量の水を消費して土壌荒廃を招く環境破壊。過酷な労働環境で子どもが採掘やカット・研磨に従事するアフリカ諸国やインドでの児童労働の問題。レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ブラッド・ダイヤモンド」(06年)では、内戦地域で産出されたダイヤモンドが武器調達の資金源となる「紛争ダイヤモンド」の問題が描かれた。