また、会社のオフィスなど慣れない場所で選考を受ける形から、慣れ親しんだ自宅や学校から選考を受けることができる点で、リラックスして話せるなど環境面の心理的制約が軽くなった面もあります。
では、企業視点ではどうでしょう。22年卒の調査で「採用活動のWeb化による成果」を聞いたところ、66.4%の企業が「採用活動費用の削減」を挙げています。選考の全プロセスを対面で行うためには、説明会会場を抑えて、現地に社員を行かせる必要があり、それだけで設備費・人件費・交通費が重くのしかかります。面接に来た学生の交通費を負担する企業もあるため、オンライン化によって削減できる費用は決して少なくありません。
次いで、「これまで接点の取れなかった学生層からの応募」が66.0%、「応募者の増加」が54.0%と続いており、オンライン化による活動の活発化が応募につながっていることが読み取れます。
もちろん対面ならではの良さもあり、対面での面接選考があったからこそ得られる情報も多くあります。その一例として学生から寄せられた声には「オフィスですれ違った社員のほぼ全員があいさつをしてくれた」(就職白書2023)というものがあります。対面でオフィスに行ったからこそ感じとれた雰囲気であり、「対面で社員の方と会うことで、オンラインよりも距離の近さを感じた。企業について理解を深める段階で対面の機会があるならぜひ行ってみるといいと思う」という声もあります。
少ない負担による、より良い
マッチングの機会が増えることに期待
対面の機会が増えたことで就職活動費用は、前年から増加傾向にあることがわかりました。しかし全国の「交通費」の平均金額は、コロナ禍前の20年卒と比べるといまだ約4割の水準です。
これからも、企業側には、学生の負担を軽減させ、少ない時間と費用でより良いマッチングが可能になるような採用活動のあり方を模索し、オンラインと対面をうまく融合しながら発展させていくことを期待しています。
(リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥)