傷病手当金は、健康保険の加入者本人(被保険者)が、病気やケガで仕事を休んで、勤務先から給与がもらえなかったり、減額されたりした場合の所得補償の役割を果たしている。

 あなたが加入しているのが労働者のための健康保険なら、標準的に最初から付いてくる給付で、1927(昭和2)年に健康保険制度がスタートした当初から存在している。

 もともと、健康保険は、労働者が病気やケガによって働けなくなり、貧困に陥ることを防ぐための「防貧機能」を期待してつくられたものだ。創設の背景には、病気やケガで労働市場からドロップアウトする人を減らし、近代産業の担い手である労働者の生活を安定させるという目的があった。

 そのため、医療費に対する給付と同様に、療養中の生活費を補償するための傷病手当金も重要な位置付けとなっており、それは時代が流れても変わっていない。さらに、給付内容は少しずつ充実してきており、現在は次のようになっている。

(1)支給要件
 ・病気やケガをした理由が業務外であること
 ・「労務不能の状態」であること
 ・連続して3日間休んだ後4日以上仕事ができない状態であること
 ・休業中に勤務先からの給与の支払いがないこと、または減額されていること

 健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やケガでの療養に対する給付で、仕事中や通勤途中の病気やケガは、労働者災害補償保険(労災保険)で補償されることになっている。また、「労務不能」とは、病気やケガで仕事ができない状態を指しており、医師の診断を基に、労働者の仕事内容などを考慮して判定される。「仕事ができない状態」と判断されれば給付を受けられるので、入院していなくても、自宅療養も給付の対象になっている。

 給付を受けられるのは、仕事を連続して3日休んだ後の4日目以降で、3日間の待期期間がある。この要件に当てはまっても、勤務先から給与が支払われている場合は、傷病手当金は支給されない。ただし、給与が減額されている場合は、その差額が支給される。