(2)支給額
 ・傷病手当金の支給開始日以前の連続した12カ月の各月の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3

 支給額は、それまでにもらっていた給与を基準にして決められることになっている。初めて傷病手当金をもらった支給開始日のある月を含めて、過去12カ月間の標準報酬月額(※)の平均を30日で割り、その金額に3分の2を掛けたものが1日当たりの支給額だ。

 ※社会保険料や給付額などを決める基準となる報酬。たとえば、月収が29万円以上~31万円未満の標準報酬月額は30万円となっており、幅のある月収を一定の金額に統一して計算する。健康保険の標準報酬月額は、1級の5万8000円~50級の139万円の50等級に区分されている。

 たとえば、過去12カ月の標準報酬月額の平均が30万円だった場合は、【30万円÷30日×2/3=約6700円】が、1日当たりの支給額になる(ただし、ここから各種社会保険料が差し引かれるので、実際の手取りとは異なる)。

 就職してすぐに病気やケガをして仕事を休んで、支給開始日までの期間が12カ月に満たない場合は、就職から休職する前月までの標準報酬月額の平均額と、全加入者の標準報酬月額の平均(協会けんぽの場合は30万円)を比べて、少ない方の金額を基に計算する。

(3)支給期間
 ・通算で1年6カ月(実際の給付日数が1年6カ月分)

 以前の支給期間は、「支給開始日から起算して1年6カ月」だった。つまり、傷病手当金を初めて支給された日から、最長1年6カ月の間に、実際に労務不能で仕事を休んだ日までが支給対象日で、暦の上で1年6カ月たった時点で支給が打ち切られていた。

 この1年6カ月の間に、病気やケガが完治すればいいが、悪性新生物(がん)のように治療が長引く病気もある。病状が改善して、いったん職場復帰しても、再発や転移をした場合は入退院を繰り返したり、その他の治療を行ったりすることも多い。ところが、以前は支給開始日から1年6カ月たつと、給付が打ち切られてしまっていた。治療中は仕事を休まなければならないことも多く、長引けば、医療費以外の生活費や子どもの教育費、住居費などの不安も出てくる。

 そこで、労働者が病気やケガの治療に専念できる期間を延ばし、労働市場からドロップアウトする人をできるだけ減らすために、2022年1月1日から、傷病手当金の支給期間が「通算で1年6カ月」に変更されたのだ。

 そのため、現在は、入退院を繰り返したり、療養が長引いたりしても、最高で1年6カ月分の傷病手当金がもらえるようになり、以前に比べて、公的保障で生活費をカバーできる期間が長くなっている。