これらの3つの円が重なる部分に近い会社を選んでいこうというのが定性判断です。
3つの円のうち、もっとも大事なのが「好きなことを好きな人と好きなようにやる」という円です。
会社の経営はうまくいくとは限りません。思い通りにいかないことや、トラブルが起きることもあるでしょう。みなさんがそういうピンチに陥ったとき、「好きなことを好きな人と好きなようにやる」環境にいたとしたらどうでしょうか。簡単にあきらめずに、「もうちょっと頑張ってみよう」と、もうひと踏ん張りできるのではないでしょうか。
新しい事業を立ち上げる起業では、ピボットといって、事業を少しずつ変えながら、当たる事業を探るプロセスがあります。このピボットの途中で挫けてしまう起業家を、私は何人も見てきました。その彼らに共通するのが、その事業や仲間が「好き」ではなかったという点です。
個人M&Aは、長年続いている会社を買うので、ゼロから起業するよりはトラブルは少ないですが、それでも経営をすればさまざまなトラブルが起きますし、それが続けば心も折れそうになります。それでも心を折らずに、成功するまで粘り強くやり続けられるかどうかは、その仕事が「好き」か、仕事の仲間や環境が「好き」かにかかってきます。
だからこそ、「好きなことを好きな人と好きなようにやる」円がもっとも大事になるのです。
買収計画の策定(2)
定性判断――「得意」も大事
定性判断では、この「好き」の円に加えて、「得意な業界」と「得意な地域」という円を合わせて考えます。
得意な業界の会社を買えば、そのビジネスに関する数字がわかるでしょうし、これまで培ってきた人脈も使えます。身に付けたスキルや経験など、自分の持つメリットを発揮しやすいでしょう。
得意な地域では、地の利を使えます。経営を始めれば、会社内部だけでなく会社の外でも動くことになりますから、当然、知っている地域は有利です。
また、中小企業の経営に関係する団体として、それぞれの自治体レベルで「商工会議所」や「商工会」「青年会議所」といったものがあります。地元であれば、つてをたどれば、そのような団体に所属している人が見つかったりして、地域で商売を行うためのコミュニティに入りやすくなります。もちろん、つてがなく、ドアノックで入っていくこともできますので、絶対条件ということではありません。