有機ELは日本発の技術だった

 いまから20年ほど前、山形県米沢市にある山形大学工学部の片隅で、有機EL素子が、ポッと白く光った。たった5ミリ角の小さな素子だったが、世界で初めて白色の有機ELが光った瞬間だった。

 そして、2011年、米沢市内のルミオテックという会社で、照明用の白色有機ELパネルの少量生産が開始された。20年前とは異なり、15センチ角で、蛍光灯並みの明るさ、しかも効率は蛍光灯より高い実用的な照明だ。発明から実用化まで、ほぼ20年を要したことになる。

 その間、有機ELはまずディスプレイに応用され、いまでは携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、そして55インチの大型テレビにまで利用されるに至っている。しかし、残念なことにその製造拠点は日本ではなく、冒頭でも述べたように韓国なのだ。

 1980年代の後半から日本の大学や企業の研究所で、有機ELに関する実用化研究が始まり、1997年には米沢市の東北パイオニア米沢工場で緑色のパッシブ型有機ELが初めて生産された。その後、TDKやNECがそれに続き、岐阜県にあるエスケイ・ディスプレイ(三洋電機とイーストマン・コダック社との合弁会社)からは世界初のフルカラーアクティブ型の有機ELディスプレイが生まれた。三洋電機のものづくり技術の高さがなければ、とうてい実現しえなかった製品だ。

 ところが、日本で生み出された有機ELディスプレイの技術が、いまや国内では風前の灯となった。一方、最近では韓国企業ばかりでなく、中国企業までもが続々と有機EL事業に参入し始めている。

 このような状況下で、2013年から韓国勢が有機ELテレビを発売開始するとなると、「日本勢にはもはや、逆転の可能性はない」と考えてしまうが、私は「十分に逆転できる」と見ている。それは有機ELが通常の「テレビ」の概念を超えるものを生み出す可能性を秘めているからであり、そこにこそ、日本勢の強みと再逆転できる可能性があると見ているからだ。

 では、いったい、有機ELによってどのような世界が現出し、大逆転の可能性があるというのだろうか?

(次回は3月13日更新予定です)


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