有機ELとは何か
最初に、有機ELについて簡単に説明をしておこう。有機ELとは「有機Elecro Luminescence」の略で、有機材料からの電気刺激による発光現象を指している。この「有機」とは「炭素を含む化合物」のことで、その意味では、石油化学製品はすべて有機物(炭素化合物)であり、なかでもプラスチックは有機物の代表といえる。
つまり、有機ELテレビというのは、簡単に言えば、「プラスチックのような有機物に電気を流すと光る」という現象をもとに、青く光る有機材料、赤く光る有機材料、緑に光る有機材料などで光る画素を構成して、テレビとしてつくったもののことである。
有機ELはテレビとしてだけでなく、照明の分野でもLEDと市場を二分する次世代照明技術として注目を集めている。とくにLEDが「点発光」の尖った光源であるのに対し、有機ELは「面発光」でやわらかい光源という違いがあるため、用途によって棲み分けるものと見られている。
いよいよ大型有機ELテレビが一般家庭へ
さて、ディスプレイの話に戻そう。液晶と有機ELとは何が違うのかというと、有機ELディスプレイの場合、画面を引き締める黒が「漆黒」といってよいほどの深みをもつ。だから有機ELの映像は、通常の平面的な2D表示であっても自然な奥行きを再現できる。それが立体的な3D表示になると、さらに連続的な深さで奥行きが立体的になる。
液晶やプラズマでも、3Dメガネをかけて立体映像を見ることはできる。たしかに、それらのディスプレイでも画像がレイヤー状になっているので、飛び出してくる映像は体感できるのだが、非常に人工的な、いわゆる3D的イメージでしかない。
しかし、SIDに出展されたサムスンとLGの有機ELの3Dテレビは本当に立体的で、実際に水しぶきが飛んできたり、足が飛び出してくるように見える。思わず顔をよけてしまうほどの臨場感がある。映画ではそのくらい迫力のある3D表現を見ることができるが、画質的にはもっとクリアである。
LGは2011年くらいから、試験的にパイロットプラントで55インチの有機ELテレビをつくり始めていた。いまは歩留まりを上げている途中で、ある程度は「つくり溜め」が終わっているはずだから、当初発表の2012年中は無理だったが、2013年のこの春以降には家電量販店の店頭に並び始めるだろう。