新日本酒紀行「WAKAZE」WAKAZE代表取締役CEOの稲川琢磨さん (c)@sadiksansvoltaire

日本酒を世界酒に!仏パリから米西海岸へ羽ばたくスタートアップ酒蔵

 WAKAZEとは「世界に和の風を吹かせる」意の社名。代表の稲川琢磨さんは、2018年に「その他の醸造酒」免許を取得し、東京で三軒茶屋醸造所を創立。15m2に200リットルタンクを4本立て、どぶろくやボタニカル酒など斬新な酒を発売した。翌年、仏パリ近郊で450m2に2500リットルタンクを12本揃えたKURA GRAND PARISを開設。パリ市内に、発酵料理とペアリングを楽しむ店も開く。

 酒質設計を担うのは今井翔也さん。酒蔵で生まれ、「日本酒を世界酒に」を合言葉に稲川さんと共に創業から走り続ける。土地の米で醸すのが信条で、フランスでは塩で有名なカマルグ産を精米90%で使う。仕込み水はミネラルが多い硬水で、清酒酵母は発酵が活発になり、超辛口酒に仕上がる。しかし、「フランス人はそんな味は好まない」とワイン酵母に変更。発酵が落ち着き、ミネラル感のある柑橘のような酸味と甘み、アルコール度13%の独自の酒が誕生した。苦労は多いが、中でも繊細な醸造技術を翻訳するのに困難を極めた。日本酒を世界酒にするには造り手を増やすこと。伝え方の工夫も必要と、「感覚の共有」を重視する酒造りを徹底。「硬水醸造法を確立し、世界中どこでも造れることを証明する」と今井さん。今年1月、WAKAZEの革新的な酒造りに共鳴する宝ホールディングス、ジャフコ グループなどの事業会社、ベンチャーキャピタル、個人投資家からシリーズBの資金調達を行った。今秋、米西海岸で新たな挑戦が幕を開ける。