世界で5万人が受けた
満足度95%の治療法
「CPAP療法が継続できない人のために開発されたのが、2021年6月に新たに保険適用になった舌下神経電気刺激療法です。手術で鎖骨の下にパルスジェネレーターと呼ばれる小さな機器を植え込み、本人の呼吸サイクルに合わせて舌下神経に電気刺激を与えて舌の付け根を持ち上げ、気道が塞がらないようにする治療法です」
既に世界15カ国で4万6000人がこの治療を受け、8割の人が無呼吸や日中の眠気が改善し、患者満足度は95%と報告されている。
今のところ舌下神経電気刺激療法の対象となるのは、18歳以上で高度の肥満ではなく(BMI[体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)]が30未満)、CPAP療法の継続が困難などの条件を満たした患者だ。
この治療を受けるには1週間程度の入院が必要になる。それでも、これまでは他に選択肢がなかっただけに、この新治療の登場はCPAPの継続が困難、あるいはCPAPでは効果が得られなかった患者にとっては朗報といえる。
舌下神経電気刺激療法を実施している病院は、この手術に用いる機器を開発したインスパイア・メディカル・システムズ・ジャパンのホームページで調べられる。
心臓病が専門の葛西氏が、睡眠時無呼吸症候群の治療に力を入れるようになったのは、研修医時代に、不整脈を起こして心臓が止まる発作を夜中に頻繁に起こす重度の心不全の入院患者に出会ったのがきっかけという。
「その患者さんは睡眠時無呼吸症候群だったのでその治療をしたところ不整脈の発作が起こらなくなり、心不全が劇的に改善して自宅で日常生活が送れるほど回復されました。睡眠時無呼吸症候群かもしれないと思っている人は、仕事のパフォーマンスの低下を防ぎ、命を縮めないためにも、ぜひ、かかりつけ医や睡眠時無呼吸症候群の治療をしている医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてほしいと思います」
(監修/葛西隆敏 順天堂大学医学部附属順天堂医院睡眠・呼吸障害センター長)