自分だけの問題ではない
恐ろしい事故の危険性

「睡眠時無呼吸症候群を放置すると、仕事のパフォーマンスが下がるだけではなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病になり、動脈硬化が進んで、心筋梗塞、不整脈、心不全や脳卒中を発症したり突然死を起こしたりするリスクが高まるからです」

 さらに恐ろしいのは、睡眠時無呼吸症候群になると運転中に睡魔に襲われ、交通事故を起こして人の命を奪う危険性もあることだ。日本でこの病気が注目されたのは、2003年にJR山陽新幹線が岡山駅でホームからはみ出して停車し、車掌が見に行くと運転手が眠っていたケースがきっかけだった。

 2013年には、関越自動車道でツアーバスの運転手が居眠りして防音壁に追突し、乗客7人が死亡する事故も起こっている。どちらの運転手も事故後に睡眠時無呼吸症候群と診断された。米国の研究では、睡眠時無呼吸症候群の患者が交通事故を起こすリスクはそうではない人に比べて約7倍高く、そのために700億ドルもの経済損失が生じていると試算している。

「適切な治療を受けることで、事故を起こすリスクは減らせますし、高血圧や動脈硬化などが改善し、心臓病や脳卒中で入院したり死亡したりするリスクを軽減することが期待されます」

 では、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、どのような治療が行われるのだろうか。