奥田氏は「そもそも日本の水は安売りされすぎている」と指摘する。
一般に水道管と呼ばれる鋳鉄管やダクタイル鋳鉄管の法定耐用年数は40年。実際の使用年数に基づく更新基準も、長いもので80年と設定されている。そして、関西水道事業研究会における調査事例(2002年)によると、その平均使用年数は59.3年だ。
一方で、日本の水道が整い始めたのは、1957年の水道法制定以降である。戦後の高度経済成長とともに、都市部の暮らしは発展した。64年の東京オリンピックの頃に、国を挙げてインフラが整備され、日本の水道網も現在のように整っていったのだ。
そして2023年――。最初の東京オリンピックの59年後となる今、設置された水道が、一気に更新時期を迎えつつあるということになる。本来は、新たな水道管への更新作業が必要だが、追いついていないのが現状だという。
「法定耐用年数を超えても更新されていない水道管は、全体の2割以上。現在の更新ペースだと、今後も寿命切れの水道管は増加するでしょう。水道管更新への投資が必要となりますが、その主体となる自治体は、今でさえ小規模なところは経営状態が赤字傾向にあります。総務省の水道事業経営指標の料金回収率を見ても、小規模な自治体ほどコストを水道料金で回収できていないことが分かります」(奥田氏)
水道料金の値上げは
今後も増える
このような危機的状況を背景として、実際に水道料金の値上げを実施する自治体が出てきた。
静岡市では、20年10月から水道料金を平均14.8%値上げした。横浜市も、21年7月に約12%の値上げを実施している。水道料金は自治体で料金を個別に設定できるため、今後も追随する自治体が増えると予想されている。