
『週刊ダイヤモンド』10月21日号の第1特集は『中学生からの地政学 投資・ビジネス・勉強に役立つ!』です。米中対立に加え、ロシアのウクライナ侵略、中東情勢の緊迫化など世界は混迷を極めています。われわれにも影響を及ぼす複雑な世界情勢を読み解く道具が地政学です。地政学を理解すれば、各国の“振る舞い”が分かり、世界の「仕組み」も見えてきます。みんなに役立つ地政学を超基本から対話形式や図解でやさしく学んでいきます。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
悩める3世代家族の前に
地政学の第一人者が登場
地政学を知れば、世界が分かる――。ここでは、それぞれの悩みを抱える、祖父の大屋(だいや)明、母の大屋恵、息子の大屋陸という架空の3世代家族の前に地政学の“第一人者”である、奥山真司氏が登場する。奥山氏はわれわれに影響を与える世界の情勢が分かる道具こそ地政学だと説く。

「こんなはずじゃなかった。何が原因なのだろう」。食卓で大屋家の3人は黙りこくり、同時にため息をついた。
「心配ですよねえ……。まあまあ、お茶でも飲みながら私の話を聞いてください」。突然、中年男性の声が食卓に割って入ってきた。
「え、誰っ!?」。気が付くと、単身赴任中の陸の父の席に見知らぬ男性が座っている。3人はひっくり返らんばかりに驚いた。
「どうも、奥山真司といいます」。びしっとしたスーツに身を包んだ爽やかな男性は、立ち上がって丁寧に自己紹介した。「私は陸くんのお父さんの友人です。この時間にこちらに伺うようにと言われて参りました」
3人はいぶかしがりながらも奥山氏から名刺を受け取り、あいさつをする。
「私はお父さんから依頼を受けて、大屋家の問題を解決するために参りました! さて、皆さんそれぞれ悩みを抱えているようですが、目の前のことばかり見過ぎていますね。それではいつまでたっても、漠然とした悩みが続くだけですよ。なぜ、皆さんのような平均的な日本人の家族の多くに荒波が襲い掛かっているのか。根本的な理由を知りたくないですか?」
奥山はそう語り始めると、恵をずばりと指さした。「お母さん、ガソリンが高いと嘆いていましたが、実は日本の石油そのものが危機を抱えていることを知っていますか」。首をかしげる恵に、奥山は軽妙なトーンで質問を投げる。「日本が輸入している原油の8割が中東からタンカーで運ばれています。けどそのルートは安全ですかね」。
「は? 中東? タンカー? 突拍子もないし、そもそも平均的家族って失礼な……」と思いつつ、恵は大学時代の知識を懸命に呼び起こし、こう答えた。「海賊がいるっていう話かしら」。
奥山は答えを言わず、次に明にこう問い掛ける。「日本は安泰なんでしょうか」。明は「日本はものづくり大国だし、安泰じゃろ」と胸を張る。
そんな明に奥山はこう投げ掛ける。「米国と中国の対立は日本の自動車メーカーにも大きな影響を与えそうです。でも、そもそもなぜ米中は対立するのか分かりますか」。