「不憫」なコンテンツが
若者にウケている!?

 そこで筆者は、Z世代における他の流行も踏まえつつ、色々と思案してみました。その結果、一つの仮説にたどり着きました。

 それは、今の若者には「不憫(ふびん)さ」を感じさせるコンテンツがウケるのではないか――というものです。

 前述した2人の外国人インフルエンサーは、頑張って日本語を学び、一生懸命話しているにもかかわらず、伝わりづらいときがあります。いわば、努力が報われていないわけです。「ちょっと無理しているのでは?」と思えるシーンもあります。

 特に後者の中国人男性は、日本人と交流しようと親しげに声を掛けているのに、何度も何度も無下に拒否されます。

 そうした彼・彼女らの動画を見た人は、単に面白いと感じるだけでなく、心のどこかで「ちょっとかわいそうかも…」と哀れむような感情を抱くのではないでしょうか。

 もしかすると今の若者は、このような「かわいそうで哀れむべき様子」に感情移入しているのかもしれません。不謹慎な見立てかもしれませんが、不憫な様子を「かわいい」と捉えている人さえ、少なからずいるように思えます。

 Z世代の若者に調査した結果、この仮説を裏付けるようなエピソードを入手できました。

「認知症の祖母」をいじる動画が
TikTokで大ウケ

 というのも、ある若者が「身の回りで流行しているTikTokアカウント」として「obaayantomago(おばあやんと孫)」を挙げてくれました。投稿者は外国人ではなく若い日本人女性なのですが、投稿されている動画に筆者は衝撃を受けました。

 なんと彼女は、記憶力や判断力が低下しつつある「認知症の祖母」との掛け合いをショート動画にしていたのです。

 一例を挙げると、この投稿者は自分の鼻をかきながら、「今、どこをかいているでしょうか?」とおばあちゃんに問いかけます。祖母は迷った末に「鼻」と答えるのですが、孫娘は「ブッブー。耳でした」と回答。それを聞いた祖母は柔和な笑顔を浮かべつつも、「知らなかった…」と本気で困惑してしまうのです。

 この動画は200万回以上再生され、「おばあちゃんかわいいなww」といったコメントも付いています。正直なところ、筆者は見ていて胸が痛くなりました。

 ですが、このように「認知症の祖母が、孫にいじられても笑っている不憫な様子」が「かわいい」として視聴者にウケている構図は、上記の外国人インフルエンサーの動画に心なしか似ています。

 先ほど「不慣れな物事に一生懸命取り組む動画」などが若者の中で一大トレンドになっていると述べましたが、もしかすると本当に流行しているのは「不憫かわいい」という新しい概念なのかもしれません。