「日本語が下手な外国人」の
動画がなぜか大流行

 意外かもしれませんが、新たなトレンドになりつつあるものは、国内外のインフルエンサーが投稿する「不慣れな物事に一生懸命取り組む様子」「頑張っているのにうまくいかない様子」などの動画です。ただ、これらが流行している理由を深掘りしていくと、Z世代の意外な深層心理が見えてきました。

 最近流行しているインフルエンサーの例は、タイ人女性TikToker「ninedayo(ナインだよ)」さん。この女性はタイ在住で、不慣れな日本語でタイの観光名所を紹介するショート動画をアップしています。7月29日に投稿を始めたばかりで、動画の本数もまだ多くないのですが、フォロワー数は約11万人とハイペースで伸びています(※)。

※フォロワー数などの数値は本稿執筆時点のものです(以下同)

 ですが、ナインさんの日本語はお世辞にも上手だとはいえません。それどころか、彼女の語り口は「今日はお前らに○○を紹介する。よく聞け!」などと、なぜか“上から目線”なのです。もしかすると「仕掛け人」が用意した台本を読んでいるのかもしれません。

 それでも、ルックスの良さと舌足らずな日本語、そして意外性のある“上から目線”の組み合わせがウケたのか、彼女の動画は累計で86万件の「いいね」を獲得。動画のコメント欄も「この変な日本語がとてつもなくかわいい」(引用コメントは原文ママ、以下同)などと好意的な投稿で大盛り上がりです。

 さらに注目すべきインフルエンサーは、日本語を学び始めて3カ月だという中国人男性TikTokerの「chenshanfuer」さん。最大のヒット作となっているショート動画は約22万回再生されています。

 その動画とは、こちらも拙い日本語を駆使して、街で出会った日本人に「インタビューいいですか?」「家に中国料理を作りに行ってもいいですか?」などと体当たりで声を掛け続けるというもの。

 さまざまな通行人に話しかけ、そのたびに冷たくあしらわれるのですが、ようやく一人の男性が受け入れてくれて…というストーリーになっています。コンテンツとしても面白いので、気になる人は一度見てみてください。

 この動画も、コメント欄では「日中の関係がなかなか上手くいかない今こういう動画見ると凄く嬉しい涙が出る」などと称賛されています。

 こうした「日本語を話せる外国人」は過去にもYouTubeなどで活動していましたが、若者が実名を挙げて「この人が面白い」と話してくれるのはかなり珍しい印象です。

 この新潮流はなぜ起きているのでしょうか。表面だけをなぞって「ヘタな日本語とTikTokとの相性がいい」と解釈することもできるのですが、これだけ「バズって」いるということは、他に何か理由があるはずです。