ドラマもまた人間関係から生まれる
あなたのお気に入りの「キーパーソン」とのアポは常に最優先し──その人の立場や肩書に関係なく──誰よりも丁寧な仕事とコミュニケーションを心がける。
相手が好きでもない重要人物だと緊張を強いられるが、この場合は好きな相手だから、打算的な思惑も不要でストレスもない。
そういった人たちとの「心の交流」の積み重ねがいつか、あなたの人生を大きく変える出来事につながることがある。
次は、筆者が実際に体験したことだ。
名刺交換をした時点では「決定権や影響力」を持っていなかったが、後に驚くほど出世する人が何人かいた。
出世した瞬間、「世間的な基準」だけで行動する人たちが、慌ててその人に群がってくる。だが、そうなる前から心の通った「人と人の関係」を築いていた筆者は、圧倒的に有利な立場を意図せず手にしたことになる。
もし筆者が、最初から「この人は将来、偉くなるから」という下心を持っていたら、「心の絆」を築けなかっただろう。なぜなら、そういった下心とは必ず言葉や態度に滲み出るからである。
難しいことは何もない。子どもの頃や学生時代に「心許せる友人」と接していた時と同じようにすればいいのだから。
振り返ると、筆者がレコード会社時代に経験した大ヒットの半数以上が、そうやって蓄積した強固な人脈によって生み出されていた。
高視聴率番組のブッキング権を任された人、CMタイアップの決定権を手にした人、超売れっ子クリエイターになった人など──多くの場合、彼らが手にしたパワーをもって、筆者が担当するアーティストや作品のブレイクスルーのきっかけを次々と作ってくれたのである。
それは、「これ以上の感動体験はない」と言い切れるくらいドラマチックな出来事だった。
思い切り「メリハリ」をつけて人間関係を構築する
これは創作ストーリーのようだが、もちろん紛れもない事実。そして、そんなドラマの始まりはシンプルな基準だ。
自分の中で「誰がニガテで、誰が好きか」「誰に会いたくなくて、誰に会いたいか」をはっきりさせた上で、思い切り「メリハリ」をつけて人間関係を構築しただけである。
このルールに従って行動していると、生活も仕事もどんどん楽になっていく。それに伴い肩の力が抜けて──少しずつだが──本来のあなたが前に出てくるようになる。
好きで会いたいと思う「キーパーソン」たちは、あなたの「ポジティブな態度」と「あなたらしい魅力」を好意的に受け取ってくれるようになる。そうやって自然と、人間的ないい関係を築けるということだ。
そしてそれが時に、あなたの人生を好転させる至宝の人脈に発展するのである。
この領域においては、打算もハックスも変化球も必要ない。
人脈術こそミニマル主義でいく
そんな至宝の人たちとの心の通ったコラボレーションが実現したら、それは間違いなくいいプロジェクトになる。そんなことが2度3度あれば、もうそれは最高の人生だ。
「みんなを大事にしようとすればするほど、誰のことも大切にできない」
「全員と仲良しになろうとすればするほど、誰ともいい関係を築けない」
言葉の真意は、もうわかるだろう。
心がNOと告げる「ニガテな人」とはうまく距離を置き、心がYESという人はとことん「ひいき」する。
まとめると──人付き合いにおいて「あなたの愛情と時間を、決意をもって大胆に配分する」ということ。
冒頭で書いたように、現代人は誰もが人間関係で苦しんでいる。人間関係に難しさを感じているのはあなただけではない。
その原因の大半が「誰にも嫌われないように」生きる姿勢にある。そうやって生きていると「本当のあなた」を出せなくなり、何年後かには、あなたは「あなたじゃなくなってしまう」。
恐ろしいことに、空気を読みすぎる風潮がある日本では「自分が何者かわからなくなってしまっている人」がたくさんいる。
そんな最悪の事態にならないために、今すぐ、この人脈メリハリ術を実践してほしい。
(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)
【参考文献】
※1 『エン転職』1万人アンケート(2021年5月)「コロナ禍における仕事のストレス」調査 日本労働組合総連合会「コロナ禍における職業生活のストレスに関する調査2022」
※2 Robert Waldinger「What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness」TED