韓国や米カリフォルニア州は実施済み
日本でも急務の法制度の確立

 Kポップの成長が目覚ましい韓国でも、アーティストなどの権利の保護、芸能事務所との不公平な関係の是正に向けた取り組みが進んでいる。21年10月、韓国の国会は「芸術家の地位と権利の保障に関する法律」を可決した。権利が侵害された場合、アーティストは政府に通報し、調査や是正勧告、救済措置の実施などを行う制度が確立された。

 韓国ができて、わが国ができないこともないはずだ。エンターテインメント業界の問題を解決するためにも、タレントなどの権利を保護する法制度の確立は待ったなしといえる。

 ジャニーズ問題では、事務所の力が強大であることから結果的に、所属タレントは泣き寝入りせざるを得なかった。こうして未成年者を含む被害者が数百人規模にまで膨れ上がってしまった。日本の芸能界は、同じ過ちを二度と繰り返してはいけない。

 近年は大手の芸能事務所から独立する俳優も増えている。背景には、これまでの慣習では、満足のいく契約だけでなく、心身の安心と安全の維持も難しいといった危機感があるのだろう。

 10月の二度目の会見でジャニーズ事務所は、325人が性被害の補償を求めたと明らかにした。それでも、問題の全容は見えない。テレビ、音楽、映画など、芸能に携わる企業や関係者はもっと真剣に根本的解決に動くべきだろう。

 そのためにも、米カリフォルニア州や韓国が定めたような法令の整備は急務だが、一方で、その場しのぎになってもいけない。テレビ局は、起用するタレントの人権が守られているかを厳正に確認する体制をきちんと確立すべきだ。公序良俗に基づき、これまでの不備を見直し、できることから順に対応していってほしい。

 繰り返すが、俳優、アイドル、歌手など全てのタレントが、安心して個々の才能に見合った対価を得る環境を整備すべきだ。そうした取り組みが、その場しのぎで終わってしまえば、根本的な問題解決からは遠ざかる。それは、わが国のエンターテインメント業界が成長する力を奪ってしまうだろう。一部の芸能事務所が強大な力を持つ構造問題を是正する、極めて重要な局面を迎えている。