「SMAP公取委」の一件が物語る
日本で特異な芸能人と事務所の関係性

 わが国のエンターテインメント業界では、芸能人と彼らが所属する事務所の関係は必ずしも公平ではない。ジャニーズ事務所など一部の有力な芸能事務所の影響力は強大化し、所属する芸能人を事実上支配する構造が出来上がっている。それは、なぜだろうか。

 まず、日本の芸能人は基本的に事務所に所属する。事務所は彼・彼女らに歌やダンス、演技の指導を行い、テレビ番組の内容にまで関与する。しばしば、個々の芸能人の能力よりも、事務所の力が強いことや、有力な事務所に所属していないと活躍するのも難しいことが知られている。

 また、事務所の意向に背くと、思ったような活躍の場を与えられなくなる(いわゆる干される)ことも多いと聞く。一例として、事務所が芸能人の姓名(本名である場合も)を商標として登録したことで、テレビ出演やグッズ販売などに許可が必要となるケースも報じられている。

 1962年に創業したジャニーズ事務所の場合、故ジャニー喜多川氏が数多くのアイドルを発掘し指導を施してスターに育て上げる一方、事務所の経営は実姉の故メリー喜多川氏が担当した。その上で、事務所のマネジャーなどがアイドルたちの活動をサポートしてきた。

 こうしてアイドルの活動に関わる多くの権限は、ジャニー氏、およびその親族が経営する事務所に集中した。例えば、どのアイドルを、どのテレビ局の、どの番組に出演させるか、アイドルの肖像権、ファンクラブの管理などの権限は、事務所のみにあった。

 エンターテインメント業界の中でジャニーズ事務所の力は、公正取引委員会が無視できないほど強大だった。19年7月、公正取引委員会はジャニーズ事務所がテレビ局に元SMAPの3人を出演させないよう働きかけた場合、独占禁止法違反につながる恐れがあると注意した。この一件も、わが国の大手芸能事務所の影響力がいかに強いかを感じさせる出来事だった。